ラルク きょう初公演 「やっと来てくれた」 会見場に報道陣殺到
世界ツアーの一環として、インドネシアで最も人気のある日本のロックバンド、ラルク・アン・シエルがジャカルタを訪れ、二日に開かれる初のインドネシア公演に先立ち、南ジャカルタのホテル・ムリアで一日、記者会見を開催した。地元メディアの記者やカメラマンら約百五十人が駆け付け、待望のアーティストを前に質問を浴びせた。
二日のコンサートは、スナヤンのブンカルノ競技場敷地内のD広場に屋外ステージを設置。一万人の観客動員を見込み、インドネシアで日本人アーティストが開催するコンサートとしては最大規模となる。
記者会見場にはテレビカメラ九台が並び、さまざまなメディアの記者が殺到。ラルク・アン・シエルのメンバー四人が姿を見せると、報道陣から歓声が上がった。
質疑応答では、ラルク・アン・シエルが昨年結成二十周年を迎えたことに記者の質問が集中した。ボーカルのハイドさんは「メンバーそれぞれがトレンドをつかみ、時代の変化に対応してきた。ラルクをやっていると女の子にもてるのも秘訣かな」と語り、人気ぶりを披露した。
インドネシアは初めてというメンバー。ギターのケンさんはインドネシアの印象について「カメラマンの人も含めて、笑顔の人がとても多い」「街がきれいなので散歩したい」とコメント。
ハイドさんは「渋滞にびっくりした」「ナシゴレンが大好き」と語り、報道陣を沸かせた。ライブについては「詳しい内容は言えないが、インドネシアの人が好きな曲を調べている。屋外会場でメンバーは皆、気分が燃える。MCは全部インドネシア語でやりたい」と意気込みを語った。
◇当日券も
世界ツアーは香港、ニューヨーク、パリなど十四都市で開催。二日の公演は午後四時開場、同八時開演で、チケットは五十万―百二十万ルピア。会場で当日券も販売される。
◇日本音楽の代名詞
一九八〇年代にヒットし、インドネシアにおける日本のポップスの代名詞となった五輪真弓の「心の友」を経て、ラルク・アン・シエル、宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、AKB48へ―。日本のポップ文化について、日本の雑誌などにも執筆しているジャーナリスト、アディティア・ライ氏は「インドネシアの若者にとって、ラルクは現代日本の音楽を代表する存在」と強調する。
九〇年代後半以降、アニメ「るろうに剣心」「鋼の錬金術師」「機動戦士ガンダム00」、ゲームのテーマソングなどを通じ、ラルクの人気が拡大。アニメやゲームファンの間にも浸透した。特定分野の作品を熱狂的に追求するオタク的な日本のポップ文化ファンのみが支持するのではなく、通常は欧米のロックを聴く音楽ファンなど幅広い層にアピールしてきたという。
インドネシアではこれまで、日本や韓国、中華圏の歌手は「アジア」の枠でまとめられる傾向が強かったが、アディティア氏は、近年の韓流ブームで状況は急変していると指摘する。
アニメ雑誌「アニモンスター」のリリー編集長は、来イしたばかりの韓国のアイドルグループ、スーパージュニアの記事を以前取り上げたところ、日本ファンが中心である同誌の愛読者が猛反発。それ以来、韓国の歌手やアニメなどは一切取り上げていないと話す。
「韓国歌手の話題に特化したメディアはたくさんある。日本ファンは長年かけて、アニメやコミック、音楽などを追ってきたため、その分、日本に対する思い入れも強い。同時に最近の韓流ブームや、それを取り巻くファンに対して浅薄な印象を持ち、否定的な見方をする人は多い」と指摘する。
今年に入り、AKB48がジャカルタでコンサートを開催。これにラルクが続いた。アディティア氏は「今までインドネシアに振り向いてくれなかった日本のアーティストがやっと来てくれるようになった。もっとたくさん来てもらい、日本の力をインドネシアで示してほしい」と語った。