佐藤周が後半猛追 二輪レース、開幕戦4位
インドネシアの二輪レース「インドスピード・レース・シリーズ」(IRS)の二〇一二年シーズンが二十一日、西ジャワ州ボゴールのスントゥール・サーキットで開幕した。全日本選手権に参戦している日本人ライダー佐藤周(JBR―M トリック・スター・レーシング)は六〇〇ccクラスに登場し、順延となった二十二日の予選では六番手。決勝では順位を上げ、四位に入った。同クラスの一―三位はヤマハ勢が制した。
IRSは今シーズン中に五戦を行い、累計ポイント数で順位が決まる。佐藤は参戦二年目で、昨年は総合六位。今年は、二輪車ロードサービス大手JBRモーターサイクルが今年発足させた独自チームのライダーとしての参戦だ。
決勝には十三チームがエントリー。カワサキ「ZX―6R」を使用した佐藤は、一時七位に順位を落としたが、レース中盤から終盤にかけて鋭い追い上げをみせた。佐藤は「後半はコースの新しい舗装に慣れ、走るべきポイントをつかめた。色々なデータを残せたので、次回は最低でも表彰台をねらいたい」と語った。
レースには、在留邦人も応援に駆け付けた。試合後のピットでは、観戦に来た子どもたちが「ドキドキした?」と佐藤にたずねたり、記念撮影をするなど交流した。
第二戦は五月二十日に行われる。
◇この熱気、日本へ 使命感でチーム一つに バイク到着遅れても‥
インドネシア人ライダーについて、「意地でも食らいつこうとするハングリー精神が強い。これまでに何度もレース中に接触があった」と佐藤は評する。
インドネシアでの二輪レース熱が年々高まっている。二輪の販売台数は一千万台目前で、所有者も年々増加。最も普及している一一〇ccのレースの競技人口は、最速の男という夢と多額の賞金を追う若者を中心に年々増える一方だ。
チームのメンバーは口を揃える。「この熱気をどうにか日本へ伝えたい」
販売台数はピークの八〇年代初めから六分の一まで減少した日本。競技人口が減り、かつてのような活気を失いかけている。「海を越えて活躍する佐藤の姿が日本への刺激になる」。レーシングチームの横山勉ゼネラルマネジャーはそう信じている。
しかし、年々東南アジアの競技レベルは高まっており、勝つのは決して容易ではない。トップレベルの選手層も分厚い。そんな中、佐藤を支えるのが、かつての黄金期の日本で走っていた元ライダーのメンバーたちだ。
鶴田竜二スーパーバイザー(ブランドパーツメーカー「トリックスター」代表取締役)、佐藤と三年間組んできた持塚一馬チーフメカニック(バイク店「エスエス・モチヅカ」代表)らが、南国への車体の空輸、マシン開発・整備、レース運営を担い、佐藤の走りに日本のレース業界の再興を託す。郡山隼一メカニックは今回チームに初参加した。
車両が到着したのはレースの二日前。競技用タイヤの到着は、予定より大幅に遅れた。突然変わる当日のタイムスケジュール。だが腹を立てたら負けだ。佐藤は「それがこの国」と割り切り、「それでも勝ちたい」と笑う。
インドネシアでの挑戦は始まったばかりだ。チーム一丸となって今シーズンを突っ走る。