赤い要塞、妖しい洞窟 中部ジャワ・クブメン レールの音に身を任せ
中部ジャワ州、インド洋に面するクブメン県。白波の海岸、迫力の滝などを観光の売りにしています。今回のおすすめ観光情報はそんなクブメンの旅人魂に火をつける3大要素「鉄道」「遺跡」「洞窟」を紹介します。(水柿その子、写真・イラストも)
ジャカルタから約6時間半、パサールスネン駅発の列車で出発、目的地はゴンボンという小さな駅です。ジャカルタからの鉄道といえばガンビル駅発着の中長距離特急列車が一般的に知られていますがゴンボンへ乗り換えなしで行くのは違う路線です。パサールスネン駅は近代化されたガンビル駅とは一味も二味も異なり、開業当時のものと思われる古い敷石や木製の手すりが今も残るレトロ駅。旅のスタート前から「鉄道」のワクワクが弾けます。
心地よい揺れとレールの音に身を任せながら景色を楽しんでいるとあっという間、ゴンボン駅に到着。オランダ統治時代に建設された小さくかわいらしい駅舎は丁寧に改装され今もピカピカ、大切に利用されています。
お目当ては駅から車で10分ほどの観光地、ファン・デル・ウィック要塞(Benteng Van der Wijck)「遺跡」。上から見ると八角形に円形の中庭、1999年の改装時に塗られたという真っ赤な建築が特徴的です。1820年ごろ、当時のオランダ総督によって建設され、日本軍も一時使用していたそうです。中に入ると一部に町や建築の歴史を伝える展示物があるものの、大部分は老朽化した壁や窓が残るまま。この建物が包容し目撃してきたさまざまな過去を感じる空気が立ち込めています。屋上には八角形をぐるっと一周するミニ列車が運行、遊園地気分で爽やかな大空と周囲の景色を一望できます。
炎天下の次はヒンヤリとした地中世界、インドネシアにある多数の「洞窟」の中でもとても個性的なジャティジャジャール洞窟公園へ。
例えば巨大恐竜。ユニークな表情のその口から天然水が湧き出ています。湿気が多いこの土地では太古の昔からの創造物のようにこけむしていますが実はそれほど古いものではないとか。日本のアニメロボットそっくりの遺跡がインドネシアで発見された? と最近ネットで話題になりましたがこれも似たような物のようです。
洞窟の入り口がまた驚きです。旅の記念のいたずら書き。現在では景勝地や文化遺産の破損問題となっていますが、この洞窟はオランダ統治時代から旅の記念のいたずら書きの名所。有料でオフィシャルに名前や訪問日を記すことができたのだそうです。横を見ても上を見ても鮮明に残るおびただしい数のグラフィティーは圧巻。ここだけ見ると「いたずら書き洞窟」です。最古のものは16年、「あ、あれあれ」とガイドさんが教えてくれました。
さらに進むと鮮やかなライティングと物語のような彫刻が自然の造形美とあいまって 地中トンネルを妖しく異様な劇場に仕立てています。この地方の伝説なのか史実なのか。戦争、ラブシーン、動物もいます。さらに進むと泉にたたずむ瞑想中の美女。この水、美貌と若返りの水とのことでしっかり手にすくって顔を洗いました。心なしツルツルになった気がしたのは幻想的な光の仕業なのでしょうか。
ジャカルタの隠れた「美駅」から鉄道で行く磨けば光る観光地の原石。ぜひ一緒に行きましょう。
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旅のことならなんでもする「旅行の人」、水柿その子(メールstsmizu@hotmail.com)。