日イのポップ結びつける 原宿、渋谷、秋葉原 「ハラ・シブ・バラ」 若者ファッションの解体新書
竹の子族、裏原系、コギャル、ガングロ、メイド、執事系男子、森ガール・・。インドネシア人若手作家が日本の若者ファッションの潮流をまとめた初めてのインドネシア語書籍「ハラ・シブ・バラ―東京ストリート・ファッションパラダイス」が出版された。日本のポップカルチャーの中で、アニメやマンガとともに人気の高いファッションを体系的に概説。トレンドが生まれる社会的背景も簡潔に示した。インドネシアの若者にとって「カワイイ」ファッションの解体新書になるかもしれない。
衝撃とともに「新手」が次々と現れる日本の若者ファッション。本書は年代記形式で渋谷、原宿、秋葉原の三つのトレンドを追う。写真や雑誌の引用などをまとめたすっきりとした構成だ。
それぞれのトレンドは、インドネシア人に分かりやすく説明。例えば、九十年代中盤に登場した女子高生ファッションのコギャル。「たるんだ形ですねをよりスレンダーに見せる『ルーズソックス』と呼ばれる白い靴下が特徴的。髪や肌の色は自然ではなく、青や茶色のコンタクトレンズを使う。ルイヴィトン、グッチなど輸入品のカバン、スカーフ、化粧品を好む」
真っ黒メイクのガングロは「黒い肌と脱色した髪、エキセントリックでカラフルな服や金銀のジュエリーを楽しむ。間違いなく既成の『きれいな女性像』に対抗していた」と説明する。
著者の日本研究家ヘスティ・ヌルハヤティさん(三〇)は「日本のポップ文化のすごいところは『いいとこどり』。海外の文化をさっと取り入れて、日本の文化にする」と指摘する。奇抜なメイクと衣装のビジュアル系は中世西洋。森にいそうな女の子「森ガール」は、英映画「赤毛のアン」などがヒント。どちらも海外文化を「日本化」したものだ。
■厳格な父、法学と葛藤
幼いころ日本のアニメ、マンガに恋に落ちた。中学生になると「日本に行かなくてはならない」と決意。おぼろげながら、日本のポップ文化についてものを書く仕事を夢に描いた。
しかし、ヘスティさんが日本研究を始めたのは二〇〇八年と最近。父は軍人で「厳格な人」。ヘスティさんが大学でポップ文化を学ぶことにどうしても首を縦に振らなかった。
「両親は私に良い大学を出て、良い仕事に就くことを望んでいた」。両親の勧めで最難関のインドネシア大法学部に進学。誰もがうらやむエリートコースを歩んでいたが、「日本について学びたい、クリエイティブな仕事がしたい」との思いが渦巻いた。〇六年発表の小説「ザビッグオー」に登場する、作家になりたいと苦悶する法学部女学生は当時の彼女の写し絵だ。
卒業後、両親の期待に反して作家への道をひた走った。強い意志についに父が折れた。〇八年にインドネシア大大学院日本地域研究科修士過程に入学、溜めていたエネルギーが爆発する。〇八年ジャカルタで開かれた「インドネシア日本博覧会」でコスプレに一目惚れし、文化研究の視点から迫った。一〇年に「二十一世紀東アジア青少年大交流計画」(JENESYSプログラム)で上智大で一カ月半講習を受ける傍ら、生のポップ文化の洗礼を受けた。この濃密な経験が執筆期間六カ月を経て、新著に集約された。
■自由な発表の場
日本留学でポップ文化を発表する公共の空間があったことに驚いたという。「日本のポップ文化の創造性、自由は素晴らしい。原宿、渋谷、秋葉原と奇抜なファッションをして、それを見せる場所がある」
ヘスティさんは日本とインドネシアのポップ文化を結びつけたいと考える。「コスプレなどポップ文化は新しい市場になる。この本で初めてインドネシア語で紹介し、インドネシアの実業家に興味を持ってほしい」「茶髪にして、目をぱっちりメイクする韓国スタイルが流行っているが、それは前から日本にあった。これからもっと発信されれば、日本の文化にももっとチャンスがある」