【じゃらんじゃらん特集】 トイカメラの不思議な世界 不安定な光量で切り取る
西ジャカルタの旧市街地コタのファタヒラ広場。黄色みがかった写真が、ノスタルジックな雰囲気を演出する。トイカメラが写し出す風景は、不安定な光量で生まれる不思議な世界。不完全な設計が特徴で、高性能な通常のカメラとはまったく異なる方法で、インドネシアを切り取ってみるのも楽しそうだ。
トイカメラにはさまざまな種類がある。最も人気があるのが、ロシア製の「ロモLC―A」(299万ルピアから)。撮影した写真は、レンズ設計上の欠陥から生まれる写真四隅の光量落ち。撮ったものが強調され、視界に飛び込んでくる。
「ダイアナF+」(130万ルピア)は楽しむ要素がいっぱいだ。数種類あり、一番安価なものだと60万ルピア。トイカメラなのに魚眼レンズ(20ミリ)などレンズ交換可。撮影後その場で確認できるポラロイド部品「インスタント・バック」や多重露光の機能、レンズを外すだけでピンホール(針穴)撮影も楽しめる。
「ホライズン・パーフェクト」(555万ルピア)は圧巻の120度ワイドビジョン。目の前の被写体の大部分が画角に入る。
■南ジャカルタに新しい専門店
南ジャカルタ・クバヨランバルにオープンしたトイカメラ専門店「ロモグラフィー・エンバシー・ストアー・ジャカルタ」。店長のトゥグ・ハルヨ・プラトモさんは、スタジオ撮影などを経験したフォトグラファーだ。
大学卒業後、写真を学ぶため、ドイツに留学。ロシア人の先生からプレゼントされたのは中国製「ホルガ」。「コダック、富士フィルム。フィルムを変えるだけでも微妙に色が違うし、表現が変わってくる」。
何回も撮り直しでき、思わずシャッターを切りすぎてしまうデジタルカメラに疑問が沸くようになった。フィルムの魅力を再確認したトゥグさんは帰国後、インドネシアのトイカメラ・コミュニティー「ロモネシア」(2004年設立)に加入した。
だが、インドネシアでは当時、人気があるにもかかわらず、ロモをはじめトイカメラを販売する店は皆無。手に入れるには、外国まで買いに行かなくてはならない。トゥグさんは07年、ロモネシアの代表に就任。インドネシアにトイカメラを根付かせるため、08年に香港のコミュニティー支部に掛け合い、店舗開店の許可を受けて同店を開店した。トゥグさんは「トイカメラ好きが高じて、店を作ってしまった」と笑う。
たった4人で設立したロモネシアは現在、ジャカルタをはじめ、ジョクジャカルタやバリ、全国に支部ができた。合同撮影会やワークショップ、写真展。さまざまな企画を、写真好き同士で共有できる。
店内には、約60万―500万ルピアのカメラが勢ぞろい。ほか各種パーツ、各種フィルムを取り扱う。カメラの修理やフィルム現像も受け付け、36枚撮りフィルムだと1本3万5000ルピアで、CDデータ化まで含まれる。