【スナンスナン】癒やしのスリン グス・テジャさんが新アルバム
バリ島のホテルロビーやスパ、あるいはヨガクラスでバリの伝統楽器スリン(縦笛)の音が聞こえてきたら、それはたいていグス・テジャさん(35)によるものだ。スリンにギターなどの現代楽器やワールドミュージックの要素を織り交ぜた独自の曲作りで知られるグスさんが、このほど4作目のアルバムを発表した。
最新作のタイトルはスンダラ。サンスクリット語で「美しい」の意味で、魂に平和と安らぎをもたらす美しい笛の音色という意味を込めた。全10曲のうち7曲が自作。バリの民謡もあり、これまでと同様、周りの自然やスピリットからインスピレーションを得て、楽譜の書けないグスさんが記憶だけで作ったものだ。
これまでの3枚のアルバムとは異なり、伴奏はギターが中心。ガムランは使用せず、他の打楽器も辛うじて聞こえる程度に抑えてある。スリンは数本を使い分けているが、すべて自分で作ったもの。今回初めてソロ曲もあり、高い澄んだ音から重厚な音と、それぞれの特徴が際立っている。
ウブドの小さな村に生まれたグスさんは小学生の頃からスリンを吹いている。当時はガムランの練習に熱心だったが、やがてメロディアスで豊かな表現が可能なスリンに没頭。練習や作曲の傍ら、世界中の管楽器について学んだ後、2008年、ギター、ベースギター、ティンクリック、ガムランなどのバンド「グス・テジャ・ワールドミュージック」を結成した。
翌年には最初のアルバム「リズム・オブ・パラダイス」を発表。これが大きな反響を呼び、続く2枚のアルバムとともに、10万枚を売り上げた。ガムラン、現代楽器、ワールドミュージックとのコラボなど、アルバムごとに新しいことに挑戦してきたグスさんの音楽は、単なるリラクゼーション・ミュージックを越えて確実にファン層を広げつつあるようだ。
先日、グスさんはアグン山の噴火に備えて避難してきた人たちが寝泊りするデンパサール市内の施設で演奏した。2週間に及ぶ避難所生活で疲れを見せていた人々にグスさんはやさしく語りかけた。「こんな不安な状況にありますが、私の音楽を聴いてリラックスしてください。今夜はどうかぐっすり眠れますように」
アルバムの購入は一般のCD店か、アイチューンストアで。詳細はウェブ(www.gustejaworldmusic.com)で。(北井香織、写真も)