ヌヌン容疑者 初公判 中銀幹部選贈収賄事件 国会に賄賂1億8000万円
二〇〇四年の中銀上級副総裁選挙に絡む贈収賄事件で、賄賂側の中心人物とされる女性実業家ヌヌン・ヌルバエティ被告の初公判が二日、南ジャカルタ・クニンガンの汚職特別法廷で開かれた。三十人に上る収賄議員の逮捕後も贈賄側の追及は遅々として進まなかったが、昨年十二月、潜伏先のタイからの送還後、女性ロビイストだった被告と元中銀幹部の癒着の実態が明るみに出た。海外逃亡が相次ぐ汚職被疑者に対する厳罰を求める声も高まっている。
検察は起訴状で、ヌヌン被告は、総額二百四十億ルピアの旅行小切手(計四百八十枚)を使用し、仲介者を通じ、このうち二百八億五千万ルピア(約一億八千万円)を中銀上級副総裁選を実施する国会第九委員会(金融・開発計画)委員に渡し、ミランダ・グルトム容疑者(同選挙で当選)への支持を求めたと指摘した。
小切手は政党のシンボルカラーに応じて赤、黄、緑、白の袋に分け、闘争民主党(PDIP)に計九十八億ルピア、ゴルカル党に七十八億ルピア、開発統一党(PPP)に十二億五千万ルピア、国軍警察会派(現在廃止)に二十億ルピアを分配。被告は個人的に十億ルピアを受領した。
小切手は、バンク・インターナショナル・インドネシア(BII、メイバンク・インドネシアに改称予定)が発行したもので、被告の秘書が被告の取り分を現金化、中央ジャカルタ・タムリン通りの同行支店の被告の口座に送金した。残りの二十一億五千万ルピアの使途は依然不明とした。
ミランダ容疑者からの要請を受け、被告は自身の保有する民家を提供し、国会第九委のエンディン・スフィハラ氏(開発統一党、禁固一年三月)、ハムカ・ヤンドゥ氏(ゴルカル党、同二年六月)、パスカ・スゼッタ元国家開発計画庁(バペナス)長官(同、同一年四月)と同容疑者の会合を設定。
闘争民主党とはホテル、国軍警察とはミランダ容疑者の事務所で会合を開くなど、同容疑者当選に向けたロビー活動を全面的に展開し、裏工作の責任者的立場として暗躍したと指摘した。
同事件の捜査で、汚職撲滅委員会(KPK)はヌヌン被告の送還後、今年一月、ゴルカル党、闘争民主党、開発統一党の現職議員を含む政治家二十二人を一斉逮捕、中銀の有力者だったミランダ氏を容疑者に断定した。事件発覚から四年を経て、手付かずだった贈賄側の責任追及が加速したが、同事件でユドヨノ大統領の与党・民主党の議員は含まれておらず、昨年以降に党幹部の関与が発覚した一連の大型汚職事件で劣勢となった同党が、対立勢力への攻勢を強めているとの見方もある。
国会が高官の選出権限を持つ政府機関は中銀やKPKなど多数あり、候補者への支持獲得をめぐる贈収賄は恒常化しているとの指摘もある。同事件で支持を得るための資金確保など癒着の構図が明るみになり、両者の責任が問われることで選出過程の透明化を高めていくべきだとの意見が出ている。