【広瀬先生の子育て相談(153)】 時を見て過去と向き合う 

◇おたずねします
 親に精神的に虐待されて育ってきました。自分が母親になった今、同じことを繰り返さないか、怖くてたまりません。

◇小児神経専門医 広瀬宏之氏
 虐待されて育ってきた人が、自分の子どもに虐待してしまうことを、虐待の世代間連鎖と呼びます。
 育児のお手本は自分の育てられ方です。人は自分が育てられたのと同じ方法でしか、子育てをできません。幼い頃、親に言われたこと、親からされたことを、どうしても繰り返してしまうのです。
 でも、それでは虐待の世代間連鎖を止めることは出来ません。
 こんな研究があります。虐待をされてきた人が虐待を繰り返すか否かの違いは、自分がされてきた虐待について意識しているかによる、というのです。つまり、自分が虐待をされてきたことから目を背けずに、辛い思いを抱えながらも、生活してきていれば、自分が虐待をしてしまうことは少ないというのです。
 反対に、自分がされてきた虐待から目を背けて、あたかも虐待が無かったかのように過去にフタをしてしまうと、無意識のうちに、虐待を繰り返してしまうのです。
 自分がされてきた虐待から目を背けないでいることは、とっても苦しい作業です。苦しくて目を背けたくなるうちは、急いで目を向けなくてもよいと思います。人から言われて目を向けるのは、もっといけません。
 苦しい過去と向き合うのは、時がきて、自分から思い出し、辛い出来事を過去のこととして葬ることができそうになってからがよいと思います。
 そのためには、今を充実させる必要があります。今の生活を少しでも豊かに、気持ちにゆとりを持って、笑いながら楽しい生活を送れるようになることが第一です。
 そんな生活の中で、無意識に、自分の育ってきた過程を反すうしていれば、それとは違った子育てができるようになります。
 ご質問の方は、それ以上のことができています。つまり、意識して振り返ることができています。
 虐待の連鎖は防げるだろうと思います。

◇質問募集
 ゼロ歳から15歳ごろまでの育児の悩みについてお答えします。お子さんの年齢、性別、質問要旨をジャカルタ・カウンセリングの春日原さんのメール(jakarta_counseling@yahoo.co.jp)までご連絡ください。プライバシーを守ります。

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