反アホック団体と面会 レバラン対話で歩み寄り ジョコウィ大統領 強硬派の懐柔策
ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は25日、アホック前ジャカルタ特別州知事への抗議集会を先導してきたイスラム強硬派、イスラム学者会議・国家ファトワ保護運動(GNPF―MUI)の代表と会談し、今後も対話を続けていくことを伝えた。昨年11月の大規模集会以来、両者が会談するのは初めて。ハビブ・リジック・シハブ・イスラム擁護戦線(FPI)代表=ポルノ規制法違反で容疑者認定=の立件で政権への反発を強める強硬派の懐柔に乗り出した。
25日はムスリムがラマダン(断食月)明けを祝うレバラン初日で、ジョコウィ大統領は中央ジャカルタのイスタナ(大統領宮殿)を一般開放する「オープンハウス」を実施。一般市民や政治家らとの懇親後、GNPFのバフティアル・ナシル代表ら7人と面会した。ウィラント政治・法務・治安調整相やルクマン・ハキム宗教相らが同席した。
GNPFは、テレビのイスラム講話番組などに出演するMUIの幹部やFPIのメンバーらで構成する強硬派団体。2016年9月のアホック氏のコーラン侮辱発言以降、「イスラム擁護」を掲げ、同氏への抗議集会を展開してきた。
11月4日に「平和集会」と銘打った集会をイスタナ前で開いた際には、大統領はGNPFやFPIの代表との面会に応じず、ユスフ・カラ副大統領が応じた。大統領の姿勢に対し、「イスラム勢力を軽視」「アホックを擁護」と不満が噴出。12月2日には、20万人規模の集会をモナス(独立記念塔)広場で実施した。事態を重く見た大統領も駆け付け、会場のステージであいさつし、平和に集会を開いたことへの謝意を集会参加者へ伝えた。
25日の会談に同席したプラクティノ国家官房長官は、「特定のことについての会談でなく、(レバランに行う)親交のあいさつだけだ」と説明。一方、11月の大規模集会以降、大統領との対話を望んできたGNPF側にとっては「待望の会談」となった。
大統領は「話し合いの場を設けていこう」と伝え、友好的な姿勢を示した。GNPF側も政府の取り組みに感謝を伝え、「政府の方針とこの国の発展を全力でサポートする」とし、互いに歩み寄りを見せた。
GNPF側は、反アホック氏運動の中心的存在だったリジック氏の立件を、政権によるイスラム指導者への恣意(しい)的な法律運用だとして反発している。バフティアル氏は会談後の27日に会見し、「政権側がムスリムと非ムスリムを区別しようとしていないことがよくわかった。それがあちらの主張だ」と述べた。「(政権との)対話が続くのならば」との条件で、GNPFは今後はデモ行為などを控えるとしている。
帰国を拒否しているリジック氏は現在イエメンに滞在中で、GNPFと大統領が会談したことを知っているという。(木村綾)