【デジタル羅針盤】 情報のキュレーター
多くの情報が溢れかえるネットで正確で価値のある情報を探しだすのは簡単なことではない。
前回、この欄で「嘘を嘘と見抜けないと(匿名掲示板を使うのは)難しい」という匿名掲示板「2ちゃんねる」創設者の西村博之氏の言葉を紹介した。この言葉は匿名掲示板だけでなく、ネットで情報収集をする際のあるべき姿勢として、各所で繰り返し引用されているものだ。
あからさまな嘘や出所の怪しい情報を退けるのは当然としても、実際には真偽を検証しようがない情報も多いし、人の知識、判断力、情報の検証に割ける時間には限界がある。
情報の内容で正確性を測ることが難しいなら、その情報を提供している人物の地位や肩書きで判断するという方法もある。
これは一定の指標にはなりうるが、無名な個人が持つ貴重な情報、見解が無視されることになる。これではネットの特性が殺され、新聞やテレビといった従来のメディアと変わらなくなってしまう。
こうした中で注目されているのが、「キュレーション」だ。もともとは博物館や展覧会などで、作品や展示を監督、保護することだが、「情報を収集し、選別し、意味づけを与えて、それをみんなと共有すること」という意味で用いられ始めている。
具体的にはネット上にはん濫する情報の中から、信頼性や内容に優れたものを見つけ出し、SNSやブログなどを通じて紹介することで、これを行う人をキュレーターと呼ぶ。
読む側は過去にそのキュレーターが紹介した情報の内容などを頼りに、自分が必要とする分野の信頼できるキュレーターを探しだせば、「あの人が薦めるブログなら」と信頼性などの判断をキュレーターに委ねて、気楽に読むことができる。
キュレーターなる人物がどこにそんなにいるのかと疑問に思う方もいるだろう。だが、例えばツイッターをやっている人なら、面白い情報へのリンクをつぶやく著名人、専門家、友人などをフォローしているのではないだろうか。
彼らはキュレーターと言えるし、逆に自分自身が気になったニュースや気に入った動画へのリンクをを投稿しているなら、キュレーション活動をしていると言える。
今後、キュレーター経由の情報は、マスコミからの情報と並ぶ重要な情報源となっていくだろう。(元じゃかるた新聞記者、福田健太郎)