【広瀬先生の子育て相談(165)】 子どもが選ぶ

◇おたずねします
 もうすぐ子どもが生まれてくるのですが、宗教教育をどうしようかと考えています。妻(日本人)はカトリック教徒ですが、私は仏教徒です。でも、2人とも真面目な信者ではなく、季節的な宗教行事に参加するくらいです。

◇小児神経専門医 広瀬宏之氏
 生きていると、どうしても理不尽なことに遭遇します。
 世の中のありとあらゆるできごとについて、理屈で考えて道理を突き詰め、人間界の営みや、自然界の森羅万象の根本原理を追及する学問があります。「科学」と「哲学」です。
 一方で、人生にはどう考えてもつじつまが合わないことがあります。そんなとき、人間は人知を超えた「大いなる存在」を想定せざるを得ません。それが「宗教」です。自分の力ではどうしようもないときに、「大いなる存在」に身を委ねる、それが宗教の一つの本質なのだろうと思います。
 筆者はキリスト教徒ではありませんし、その反対の立場でもありませんが、有名な処女懐妊のエピソードを取り上げてみたいと思います。
 「イエス・キリストの誕生の次第は次のようであった。母マリアはヨセフと婚約していたが、2人が一緒になる前に、聖霊によって身ごもっていることが明らかになった。(マタイによる福音書―1章 18節、新共同訳)」
 人間の誕生の仕組みはほぼ解明されています。科学の立場からは「聖霊で身ごもる」ということはあり得ないことです。
 でも、マリアとヨセフが、さまざまな偶然と必然を乗り越えて身体的な出合いに至り、イエスという子どもを授かったというプロセスは、科学だけでは説明がつきません。
 特定の宗教を是とするか否かは別として、「大いなる存在」を信じることは、理不尽で不条理な人生を過ごしていくに当たって、支えとなり、拠り所となります。
 もちろん、人生で何を拠り所にしていくか、それは、生まれてくる子どもが選んでいくものです。でも、選択肢を提示するのは周囲の大人の役割だと思うのです。

◇質問募集
 ゼロ歳から15歳ごろまでの育児の悩みについてお答えします。お子さんの年齢、性別、質問要旨をジャカルタ・カウンセリングの春日原さんのメール(jakarta_counseling@yahoo.co.jp)までご連絡ください。プライバシーを守ります。

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