【じゃらんじゃらん】王国に思いはせ マジャパヒトの遺物今も 東ジャワ州モジョクルト・トロウラン
「また遺物が見つかった」。東ジャワ州モジョクルトのトロウランは、13〜16世紀初頭にインドネシア最後のヒンドゥー教王国として栄えたマジャパヒト王国の中心地だった場所として知られている。スラバヤ市内から高速道を使い、車で2時間弱の距離にあるこの地では、今でも地元の人の家の庭や農地から、食器などマジャパヒト王国の遺物が見つかる。同地域に残る遺跡を訪ねた。
モジョクルトに入ってから20分ほどで、道路沿いに大きな池が現れた。貯水池かと思いきや、これはマジャパヒト王国の遺跡の一つ「セガラン池」。大きさは東西175メートル、南北735メートルの長方形で、深さは1.6〜約2.9メートル。セガランの名は、ジャワ語で海を意味する「Segara」からとっている。池の岸はセメントを使わず、れんがを互いに強くこすりあわせて頑丈に積み上げて作られているという。
■ゆったりとした時間
モジョクルト出身・在住で、地元の観光地案内を務めているリヤディさんによると、この池ではかつて王族が客を招待しパーティーを開いていた。食事には金でできたスプーンや皿などの食器が用いられた。そして食後、全員で食器をこの池に投げ入れていた。リヤディさんは「マジャパヒト王国の豊かさを示すための慣例のようなものだった」と話す。
だが、実はこの池の底には網が引いてあり、招待客らが全員帰った後、網を引き揚げて食器を回収し、きれいに洗って使いまわしていたという。セガラン池は今では、釣り人の憩いの場になっており、ゆっくりとした時間が流れていた。
セガラン池から車で10分ほどの場所には、モジョクルト博物館がある。午前8時〜午後4時で、外国人観光客は1人5万ルピア。インドネシア人は大人が同5千、子どもは同2500ルピアだ。展示室には貯金箱や食器類などの生活用品、建築物のオーナメントなどが飾られており、芝生が広がる庭にも仏像やレリーフなどがずらりと並ぶ。
博物館の周辺には、マジャパヒト時代に赤れんがで作られた門「チャンディ・バジャン・ラトゥ」がある。これはかつての王宮の門だったと考えられている。他には、ネズミ寺院という意味の名前を持つ水浴び場「チャンディ・ティクス」などがある。どれもすべてれんが造りだ。
■イ最大の涅槃仏
マジャパヒト王国の遺産が残る同地区だが、実はインドネシアで最大の涅槃仏(ねはんぶつ)もある。黄金の巨体が寝転んでいる姿は圧巻。全長は22メートル、高さは約4.5メートル、奥行きは6メートルある。外国の支援などで1993年に作られたという。同地区周辺にはヒンドゥー教徒や仏教徒もおり、それぞれ遺跡として残るチャンディや、この涅槃仏のそばにある寺などへお参りに訪れるという。
リヤディさんは「私の家の近くの農地からも何度か、つぼや食器などの遺物が見つかっているよ」と笑う。トロウランは東ジャワ州が観光地として力を入れている地区の一つでもあり、マジャパヒト王国時代の建築方法やデザインを採用した家の建設を推奨している。「マジャパヒト王国の繁栄を忘れないように」との考えもあるそうで、同州政府が資金を出し、随時、希望者を募っている。もともとある家屋の手前に新たな家屋として建てている人が多く、キオスクになっている家屋もあった。
東ジャワを訪れた際には足を延ばし、昔のマジャパヒト王国に思いをはせてみては。(毛利春香、写真も)