トランプ氏に注視 ハリー氏、就任式出席 ジョコウィ大統領が祝辞

 インドネシアでも20日に就任したドナルド・トランプ米大統領への関心が高まっている。米国第一主義や人権差別主義的な発言に国内メディアや専門家が相次ぎ懸念を表明。トランプ氏と共同でビジネスを手がける企業家もメディア露出が増えている。 
           
 日刊紙コランテンポは19日付一面トップでトランプ氏と事業を進めるMNCグループを取り上げた。トランプ氏はメディア、金融などを手がける大手複合企業のMNCと西ジャワ州ボゴール県リドでリゾート開発とバリ島にホテル開発を計画する。
 20日のトランプ大統領就任式に出席したMNC率いるハリー・タヌスディビヨ氏は米メディアに対し「すべてうまくいくように進めるのが私の責務」と述べ、総額28兆ルピア(約2400億円)とされる事業を今後加速させることを印象づけた。
 ハリー氏は大統領就任式に出席した様子を写真共有サイト「インスタグラム」の公式アカウントに随時掲載。トランプ氏や息子エリック・トランプ氏らと懇談する写真も載せ、この写真をMNCグループのメディア「オケゾン」や「シンドニュース」が積極的に取り上げ、両氏の友好関係をアピールした。MNC広報のシャフリル・ナスチオン氏はじゃかるた新聞に「ボゴールのリド開発は2019年までの完成を目指している」と述べた。
 「米国はインドネシア経済に与える影響がかなり大きい」(三井住友銀行シンガポールの鈴木浩史氏)とインドネシアにとって米国の為替政策への関心は高い。国内シンクタンク、経済改革センター(CORE)のモハンマド・ファイサル・エクゼクティブ・ディレクターは21日に「トランプ政策の影響予測」と題した声明を発表。米国の出方次第で中銀が今後政策金利の引き上げに動く可能性を示唆した。
 ファイサル氏は米国内のインフラ投資を加速させる政策が原材料の消費増につながり、インドネシアから米国への輸出の増加に貢献する可能性を指摘した。
 一方、原材料への輸入関税の増税は米国企業に負担として跳ね返るため、「(トランプ氏の保護主義政策は)原材料に対しては非関税障壁を課すことが考えられる」と述べた。
 トランプ氏のムスリムに対する差別的な発言に対しては、インドネシア大学のヒクマハント・ジュワナ教授(国際法)が国営アンタラ通信に「過激派のイスラムを撲滅するといった彼の発言は(インドネシアを含む)イスラム諸国に少なからず影響を与えるだろう」としている。
 ニューヨーク市のアル・ヒクマ・モスクを管理するインドネシア人イスラム指導者、シャムシ・アリ氏は地元メディアに「差別主義を公言する米大統領は、ムスリムにとって不安や懸念はあるが、米国は多様性と寛容な国」と語った。
 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は22日に「今後もインドネシアと米国は互恵的な関係を築いていく」とトランプ氏の大統領就任を祝った。(佐藤拓也、2、3、4面に関連)

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