【スナンスナン】アートで新たな視点を 参加型展覧会 シンディカット・チャンプルサリ
国際交流基金アジアセンターが主催するコンテンポラリーアートの展覧会「シンディカット・チャンプルサリ」が、南ジャカルタ・パンチョランのグダン・サリナ・エコシステムで開幕した。日本、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイのキュレーター(学芸員)6人と、集団で芸術活動をする「コレクティブ」ら9個人・組が一堂に会し、ジャカルタの都市開発などインドネシアが抱える社会問題を問うアートを展開している。2月14日まで。
来場者の問題意識を引き出せるよう、参加型で楽しめる工夫が凝らされている。会場中央には砂場が広がっており、宝探しやサンド・アートが楽しめる。一方、砂の下には仮想のカンプン(下町)の姿が描かれているが、砂に埋もれて見ることはできない。都市開発が進むジャカルタで、現在ある大きなビルの下にはカンプンがあったことを連想させているという。
制作プロジェクトでは、ジャカルタ特別州や西ジャワ州バンドン市、ジャティワンギ県、ジョクジャカルタ特別州へ足を運び、地元住民の各種コミュニティーを訪ねるなどした。社会問題を捉え、自分たちに何ができるか考えたという。
壁一面に並べられた水の入ったグラスは、訪ねたコミュニティーのメンバーの使っていたグラスを新しいグラスと交換して持ち帰った。来場者は自身の思い出の品と交換で、水を飲み、グラスを持ち帰ってもらう。他に、ジャワに古くから伝わる、竹で作ったフィルターを通して作るコーヒー作りなども楽しめる。
「シンディカット・チャンプルサリ」は、複数の現代音楽が混ざり合ってジャワ島で発展してきた音楽「チャンプルサリ」とシンジケートを意味する「シンディカット」を合わせ、集団で芸術活動を行うことを示している。
インドネシアは美術館やギャラリーが少なく、展示ができる環境が整っていないという。1998年のスハルト政権の崩壊以降、現代美術の活動では、芸術家らがグループを作り、作品の制作だけでなく、発表の場も自分たちで作る必要があり、互いに助け合い支え合っている姿が多いという。
日本からは今回、独立系キュレーターで東京芸術大学准教授の飯田志保子さん、東京都現代美術館学芸員の吉崎和彦さん、現代アーティストの加藤翼さんが参加。吉崎さんは「個人と集団の違いを考え、時には葛藤しながら、一つのものを作り上げた。ジャカルタで急速に進む都市開発など、今ある社会問題•背景、そしてインドネシアのコミュニティーが持つ知恵ややり方をアートを通じて表現し、また違った見方を提供したい」と語る。
同様のイベントは「東南アジアとは何か」という共通のテーマが基礎となっており、クアラルンプール、マニラ、バンコクでもジャカルタに続いて開かれる。各国でそれぞれキュレーターや芸術家らが特色ある展覧会を展開していく。(毛利春香、写真も)
Gudang Sarinah Ekosistem
住所 Jl. Pancoran Timur II No. 4, Jakarta Selatan
開館 平日午後1時~同9時、土日午前11時~午後9時
☎ 国際交流基金(021・520・1266)