来年はジャカルタ公演 ジョクジャのユース交響楽団 在パリ指揮者の阿部さん設立
パリ在住の世界的指揮者、阿部加奈子さんが昨年設立し、ジョクジャカルタ特別州を拠点にするインドネシア・ユース交響楽団(IYSO)がこのほど、同特別州のジョクジャカルタ・サナタ・ダルマ大学オーディトリウムで2回目の演奏会を開催、800人以上の観客を集めた。阿部さんは来年、ジャカルタで初のIYSOコンサートを開く準備をしている。
今回の曲目は、インドネシアで誰もが知っている愛唱歌「タナ・アイルク(祖国)」のオーケストラ用編曲のほか、インドネシア人をソリストにしたドボルザークの「チェロ協奏曲ロ短調」、チャイコフスキーの「交響曲第4番へ短調」など。チャイコフスキーの4番は交響曲の中で技術的には最も難しいとされるが、阿部さんは「完成度の高い演奏だった」と練習の成果を高く評価した。
楽団メンバー70人の中心はインドネシア芸術大学(ISI)ジョクジャカルタ校の学生。今回は東京外国語大からガジャマダ大学に留学中の高橋淳平さん(トロンボーン)、米国インディアナ州デポー大学から留学中の花堂佳月さん(チェロ)も加わり、日本との交流が深まったという。
阿部さんは今回の曲目に速いテンポを指定した。楽団員の中には、最初はパニックになり、絶対無理との反応もあったが、阿部さんは楽団員が望むゆっくりしたテンポには妥協せず、インドネシアの潜在的な能力に期待したという。「インドネシアの学生たちは一人一人に音があり、色彩がある。インドネシア人は芸術的センスの高い民族であるとあらためて実感した」という。
来年の定期演奏会は8月下旬か9月初めにジャカルタで行う予定。阿部さんは「単にオーケストラで演奏するのではなく、団員らがいずれ指導者となり、インドネシアに適した新しいクラシック音楽教育を次の世代に伝えていけるようになってほしい」と話す。また、「学生たちが将来、音楽の専門家にならず一般企業に勤めたとしても、オーケストラで学んだ社会性は必ず役立つ」と強調した。
2011年の東日本大震災後、パリでチャリティーコンサートを開いた阿部さんにISIの教授が指導を依頼。全く面識がなかった阿部さんが12年にジョクジャカルタを初訪問し、以来、毎年音楽監督として指導を続け、昨年IYSOを立ち上げ、初演奏会を行った。(濱田雄二)