もっとオペラを IOS 10周年記念公演
インドネシアでオペラを広めようとコンサートを企画・開催している「インドネシア・オペラ・ソサエティー(IOS)」は7日、南ジャカルタのダルマワンサ・ホテルで創立10周年記念公演を開いた。世界各国から約600人が足を運び、オペラの世界に酔いしれた。
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の主席客演指揮者で日仏を拠点に活躍する矢崎彦太郎さんが、インドネシアのオーケストラ「ヌサンタラ交響楽団」の指揮を務めたほか、スペインやスウェーデン、イタリア、インドなど世界9カ国とインドネシアから集まった11人のオペラ歌手らが、計19曲を披露した。
プッチーニの「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」や、モーツァルトの「魔笛」の中で歌われる「夜の女王のアリア」など、誰もが1度は耳にしたことのある演目を披露。最後はアンコールに応え、ワインを片手にベルディーの「椿姫」より「乾杯の歌」で華やかに締めくくった。
ベルギー出身のメゾソプラノ歌手アンジェリケ・ノルドゥスさんは、インドネシアに来たのは初めてで「インドネシアは音楽も文化も魅力的」と話す。また、オペラを知ってもらうには「コンサートホールだけでなく、駅や空港、ショッピングモールなど誰もが訪れる場所でオペラを歌うと良いと思う。歌はどこでも歌えるし、前触れなくパフォーマンスを披露する『フラッシュモブ』は歌い手や演奏家も楽しい」とアドバイスした。
インドネシア・オペラ・ソサエティーを創設したエルザ・ストヤハルマさんは、15歳の時に祖母に連れられて行ったオーストラリア大使館でのオペラ・コンサートで「美しい声や音、衣装に魅了され、オペラのコンサートを作りたいと思った」という。オペラの知識を深めるため、日本人やアメリカ、ドイツ人の先生からオペラの歌い方や技法などを学んだ後、ジャカルタでオペラを広める活動を続けてきた。
エルザさんは「10周年を迎えられて本当にうれしい。インドネシアでは、まだまだオペラは身近なものではないので、これからも工夫してオペラを楽しめる機会を増やしていきたい」と話した。
■感性に頼らないで
矢崎さんがヌサンタラ交響楽団で指揮をするのは4年ぶり。
「時間が開いても、少しずつ学んで蓄積されているものがあると分かり、うれしかった。プロでもアマチュアでも難しい所は実は同じで、上手な楽団はどこが難しいのか、何を気を付ければいいのかを事前に理解し、音をコントロールしている。ヌサンタラ楽団も落とし穴に落ちないところが増えた」と喜びを語った。
インドネシア人の演奏家については「みんな音楽が好きで、すごくフレッシュ。感性が高く音楽の才能がある」という。一方で、音に軽さがなく、テンポが遅くなりがち。「軽さがないのはじめじめとした気候から、遅くなるのは皆のんびりしているからかな」と矢崎さん。「音楽は環境や言葉から来るもの。それぞれの国や人で音は全く変わる。感性だけに頼ってアバウトにならず、きっちり演奏することを学ぶ必要がある」と話した。(毛利春香)