日本のパワー、伝えたい バザール・アートに共同出展
南ジャカルタ・スディルマンにあるホテル・リッツカールトン・パシフィックプレイスで開催されたアート作品の展示・即売会「バザール・アート・ジャカルタ」が28日閉幕した。世界各国から42のブースが出展、4日間で約1万人が来場したイベントになった。日本から共同出展した画廊にインドネシアのアート事情を聞いた。
東京、大阪の三つの画廊が共同出展したブース「LSD」には連日多くの観覧客が訪れ、版画やアクセサリーなどの作品を鑑賞した。
大阪市北区で「YODギャラリー」を運営する石上良太郎さん(43)は「ことしで3回目の出展となるが、売り上げの面では一番厳しかった」と振り返る。今月5〜7日に同じ南ジャカルタのシェラトングランド・ジャカルタホテルで、同様のアートの展示・即売会「アート・ステージ・ジャカルタ2016」が開かれたことで、来場するコレクターが分散してしまったという。
東京・目黒で「エミグレ」を運営する石坂徹朗さん(42)は若手の画家、朱池亮人さんの絵画や自身が製作したアート作品などを出展した。
「まだ名前が浸透していない若手の作品を中心に見てもらおうと思った。比較的買い求めやすいアクセサリーなどが多く売れた。来年からは、展示や販売のやり方を考えて改良しなければ」と振り返った。
東京の神田神保町で「ギャラリーコグレ」を営む小暮洋さん(53)は、取り引きするインドネシア人の顧客は徐々にではあるが、増えているという。
「人口は多いし、多様な民族が住む国でとても魅力がある。アート作品のコレクターも多いし、作家も多い。ポテンシャルは高いと思う。ただ、日本と同じ島国気質というか、自分の国のアート作品を好む傾向がある。ほかのブースの展示作品もインドネシア人が好む『くっきり、はっきり』とした作品が多い。日本画の特徴であるわび、さびの感覚や繊細さはなかなか伝わらない」と分析する。
複数の画廊が共同で出展することは珍しいという。小暮さんは「基本的にはお互い商売敵。ただ、現状は日本国内のアート業界は斜陽となっている。力を合わせて『護送船団方式』で出展し、それぞれの作品を通して日本のアートの良さ、パワーを伝えていければと思う」と説明する。
今後の展望について「理想は地元の画廊で展示会を開けるような状態になること。そのためにはこうした催しを通して日本のアート作品の魅力を伝える活動を地道に続けていかないといけない。必要な投資だと思い、利益を度外視して出展している」と笑いながら話した。(平野慧、写真も)