【じゃらんじゃらん】ドラゴンの島 玄関口はラブアン・バジョ 東ヌサトゥンガラ州コモド国立公園

 ブチブチブチッ。肉のちぎれる音。全長3メートルほどの大きな6頭と小さな1頭の計7頭のコモドドラゴンが木の枝からつるされたエサの子鹿に群がり、土煙を上げていた。表皮が硬いのか、体がぶつかると車のタイヤ同士がぶつかったような鈍い音がする。しっぽで地面をたたくと、ドシッと音がする。3メートルほど離れて撮影していたが、これ以上近寄るなと案内係のレンジャーに制止された。 
                                   
 東ヌサ・トゥンガラ州フローレス島西側に浮かぶ、コモド島やリンチャ島などを含めた約17万3千ヘクタールの広大なコモド国立公園を訪れたのは、先月下旬。フローレス島は、ジャカルタよりも気温が高く、空気がきれいだった。
 公園は1991年、ユネスコ世界自然遺産に登録された。コモドドラゴンはコモドオオトカゲの別名で、職員はコモドドラゴンを「コモド」と呼ぶ。公園全体で約2800頭が、訪れたリンチャ島には1300頭以上が生息しているという。
 公園内には常時森林警備隊員(レンジャー)約20人が3棟のロッジに滞在している。観光客の案内役と安全を守る役割で緑のポロシャツが目印だ。
■食欲に圧倒される
 オジェック運転手から1年半前、レンジャーに転身したアリさん(28)は「ラブアン・バジョ港からは遅いボートでも片道約2時間なので日帰りもできる。来るときは長袖長ズボンに運動靴がベスト」と話す。
 アリさんは先がYの字になった「トンカ」という棒を携え、見物に夢中になる観光客を、これ以上は危険と制止する。眼前ではコモドドラゴンがエサの子鹿を食いちぎり、骨ごと丸のみにしている。誰もがコモドの食欲に圧倒されていた。アリさんは「コモドのふんはときどき白くなる。骨ごと食べてカルシウムが混じることがあるから」と説明した。

■コモドの子どもは30?
 「オスの方がメスよりしっぽが長い。トカゲの仲間ではあるけれど、しっぽが生え替わることはない」。アリさんは「1度に15〜30個の卵を産む。約9カ月後にかえってからは、樹上生活が2〜3年。木から降りてくるのは水を飲むときだけ。子どもの体長は30センチぐらいだ」と続けた。
 開園時間は午前7時〜午後4時。入場料は平日と土曜が1人15万ルピア。日曜祝日は22.5万ルピアになる。これにトレッキングやシュノーケリング、レンジャーの料金が上乗せされる。平日にレンジャーを頼むと、入場料と合わせ1人当たり23万ルピアかかる。

■ダイブも魅力
 玄関口となるラブアン・バジョ港沿いのスカルノハッタ通りは、軽食店からオーシャンビューのバー、ダイビングセンターが軒を連ね観光客でにぎわう。
 2007年に米国からダイビングに訪れたエイドリアン・サルコーさん(34)はことし3月、自らオーナーとなってタコス専門店「バジョー・タコ」を同通りにオープンした。「カトリックからムスリムまでいろいろな文化が混在しているところが魅力」と11年に再訪し、ダイビング店のスタッフとして働き、経営の知識と開業資金を貯めた。
 デトロイト出身のサルコーさんは「タコスが大好きだったから、自分で作ることにしたの。自家製トルティーヤ(薄焼きパン)を作るまでが大変だった」と語った。今では、なじみのダイビング店のインストラクターがお客を連れてきて、毎晩盛り上がるという。「日本の旅行者を増やすには日本人インストラクターが必要。最初の1人が来れば、もっと多国籍な場所になるわ」と笑った。
 スカルノハッタ通りに並ぶダイビング店の一つ「ブルーマリンダイブ・コモド」に2年勤めているレタさん(24)は、ダイビングスポットは「数え切れないほどある」と話す。「マンタやウミガメとの遭遇率が高い。欧米とカナダからの旅行者が多い」と語った。
 陸上では世界最大のトカゲを、海中ではマンタのような大物を、見ることができる。世界広しといえど、そんなところはコモド国立公園しかない。(中島昭浩、写真も)

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