土地収用法案可決 インフラ整備に弾み 「一歩前進、運用が課題」

 インドネシアのさらなる経済成長に不可欠なインフラ整備に向け、土地収用が大きな障害となる中、国会は十六日、土地収用法案を可決した。大統領の署名を経て施行となる。法案通過により、港湾、鉄道、道路建設のための用地取得が進むことが期待されている。

 法案では、政府が土地収用を決定してから、所有者や政府との間で、四百三十六日以内に手続きを終了することを定めた。
 国土庁(BPN)は、土地の所有者を確定した後、金融関連の専門家で構成される評価・鑑定チームに土地所有者に支払う額の査定を依頼。賠償に関しては、お金を介したものだけでなく、代替地の提供を含めた選択肢の中から、政府側と所有者の協議で決定する。
 同法案は、金額の査定基準が定められている日本の土地収用法とは異なり、土地保有者は政府の賠償金額に不満がある場合は州政府や最高裁に申し立てを行うことが可能。
 土地収用に関する規定は二〇〇五年に大統領令として制定されたが、一向に進まない土地収用のため、実業界からもより法的拘束力のある法律としての成立を求める意見が高まっていた。
 インドネシア高速道路協会ファトゥル・ロフマン会長は「数年来、土地取得が原因で遅れている高速道路建設のプロジェクトも進むだろう」と期待を見せている。
 しかし、農家や漁師、地域住民による土地所有権管理や農地利用における公平性の確立を目指す非政府組織(NGO)土地改革コンソーシアム(KPA)のイワン・ヌルディン氏は「法案成立で喜ぶのは政府と賠償を要求する人のみ。貧しく、土地を離れたくない人は考慮されていない」と非難した。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所の富吉賢一所長は「法案成立は一歩前進といったところ。必ずしもスムースに進むことになるとは限らないが、これまで賠償に関することなど、政府と所有者の双方にとって不明瞭だった部分が明確になり、合意も得やすくなる」と話す。
 また、西日本高速道路社インドネシア駐在事務所の和田義弘所長は「今回の法案可決は前進。道路建設では一部でも土地が入手できないと計画が進まない。一方、土地価格の決定などはまだ問題があり、運用面では課題を洗い出していくことが重要だ」と話した。

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