東ジャワジャパンクラブ 今年40年、さらなる飛躍 発展に伸びしろある地域 河口裕司常任理事長に聞く 特性生かした進出を
東ジャワ州スラバヤ市に事務所を置く東ジャワジャパンクラブ(EJJC)は今年40周年を迎える。現在の会員数は約570人、50社。スラバヤはインドネシア第2の都市と呼ばれ、日系企業の進出など東ジャワはまだまだ伸びしろのある地域。17日には新年会が盛況に開かれ、開催前に河口裕司常任理事長(62)に節目の年に当たる今年の現状や今後の展望を聞いた。
■スラバヤを知って
「インドネシアといえばジャカルタかバリのイメージが強く、日本人にとってスラバヤの認知度は低い。昨年末のエアアジア機の事故で、日本でもスラバヤの名前が知られたようだが、それは残念なこと。独立戦争などの日イの深い歴史を知ってもらうなど、スラバヤならではの良い面を生かして認知度を上げたい」と意気込む。
ジャカルタに比べ渋滞が少なく、ゴルフやモールなどの娯楽施設、豊かな自然があり過ごしやすいため、ストレスも少なく良いビジネススタイルが保てるという。「日本の企業関係者らはジャカルタだけを訪れがちだが、スラバヤにもぜひ足を運んでほしい」と話した。
さらに今後取り組む活動の一つにスラバヤ日本人学校(SJS)への支援を掲げた。資金不足で、学内の設備環境が整えられていないという。「SJSの子どもたちは日本の宝。日本とインドネシアの両方を理解し、尊敬し合う心を育む学校。シロアリにくわれた校舎や、開いた穴をガムテープでとめて使用しているビニールプールなどを見て、このままではだめだと強く感じた」
■JJCと協力構築
インドネシアの日本人会はこれまで個々に活動しており、横のつながりが弱い。まずはジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)とホットラインを設け互いに協力関係を築き、日本人会同士の絆をより強固にするきっかけを作る。「JJCと比べると規模に差はあるが、日系企業が抱える悩みは共通。最低賃金上昇などの人事労務問題や安定性のないエネルギー供給は製造業にとって致命的な問題。インドネシア政府に向けて積極的に意見を伝えていく」
日本語の通じる医療機関が地方都市にないことへの対策や学校教育、文化活動の面でもJJCと協力を重ねる。
■均衡取れた政策を
ジョコウィ大統領については、ジャカルタ州知事時代の姿からビジネスマインドの高い人だと期待しているという。「新政権に求めるのはバランス感覚。貧困層への支援など目先の課題だけでなく、10年、20年先を見据えた長期的な視点を持ち、中間層への支援やインフラ整備、海外企業の投資環境を整える必要がある」と話した。
最も気にしているのは最低賃金の引き上げ。「賃金は経営者から見たコスト面、従業員から見た生活の糧、社会から見た経済発展の源という三つの顔があり、こちらもバランスを取ることが大切。インフレ率が5〜6%ということもあり、最低賃金の上昇は必要だが、インフレ率の数字以内で生活環境が向上するよう上げるべきだ」と話した。
■産業別に地方進出
スラバヤにはタンジュンペラック港があり、製造業にとって輸出拠点となっている。一方、陸上運輸ではスラバヤ〜ジャカルタ間は高速道路がつながっておらず一般道の利用が必要。トラックによる運搬では、渋滞などの影響で片道36時間かかることもあるという。さらに一般道は路面が悪く、商品に傷がつくことも多い。納入時間の厳守や商品のダメージ軽減など「物流の品質」を維持することが難しく、国内向けの商品供給は脆弱(ぜいじゃく)になりがちだという。
河口理事長は「ジャカルタでなくてはならない企業と、そうでない企業があり、産業別で進出先を選ぶことができる」とし、「例えば、自動車部品などの重工業は、組み立てラインに合わせて一日に決まった時間に何度も納入する多回納入が必須で、スラバヤの工場からジャカルタへ商品を運ぶのは困難」。一方で「食料品や衣料品、雑貨などの軽産業は一度にまとめて大量の商品を運ぶため、スラバヤで生産しても十分にやっていける」と指摘、日系企業経営者と政府はジャカルタから、スラバヤやバンドンなど他地域への進出を促進させるべきだと訴えた。
■高い従業員定着率
スラバヤで働く現地従業員については「ジャカルタに比べると、製造業などの現場で働く従業員らは定着率が高い。企業数が少なく転職が難しいという面もあるが、大都会ジャカルタとは違い田舎ならではの雰囲気で人とのつながりを大切にするため、会社への帰属意識も高い」と話した。一方、教育機関が少ないことや、ホワイトカラー(事務職)と呼ばれる従業員は、優秀な人材のほとんどがジャカルタへ流れてしまうことが問題だという。
「今ある技術力はインドネシアより日本の方が高いが、きちんと教えれば日本人以上に品質の高い商品を作ることができ、世界で勝てる競争力がある。日系企業の進出が相次ぎ飽和状態のジャカルタに比べ、東ジャワでは4地域で新たな工業団地の建設が進むなど、伸びしろのある地域だ」と今後の一層の発展に期待を寄せた。
【新年会、270人が祝賀ムード 演奏、合唱…歓声満ちる】
東ジャワジャパンクラブ(EJJC)は17日、スラバヤ市内にあるメルキュール・グランド・ミラヤ・スラバヤ・ホテルで2015年新年会を開いた。今年40周年を迎えるに当たり、日頃から交流を持つ会員や在留邦人らは一層の絆を深めた。
野村昇総領事や岡野哲郎顧問、西章夫会長など会員ら約270人が参加し、40周年記念の旗が飾られた会場は、新年の祝賀ムードで盛り上がった。
野村総領事はあいさつで、17日が阪神淡路大震災発生から20年であることに触れ、全員で黙とうをささげた。日イ関係については「今年は戦後70周年記念を念頭に日イ関係の行事もいろいろあるだろう。昨年10月に新たに発足した政権が東ジャワ州の日系企業にとって好ましい政策をするかどうかはまだ分からないが、期待したい。このひつじ年が柔らかい、温かい、角のない年になることを祈念する」と述べた。
西会長が乾杯の音頭を取り開幕。初めにヤマハ社のビッグバンド「ヤマハ・イーストウィンド・オーケストラ」が「上を向いて歩こう」や映画アナと雪の女王の「レット・イット・ゴー」など新旧4曲を演奏。続いて「ジャワ・ガムラン同好会」がガムランを披露し、インドネシア伝統の響きが会場を包んだ。
在留邦人の男声合唱団「ラグラグ会」はインドネシアの曲「アヨ・ママ」など7曲を合唱した。女声合唱団「ブンガ・マワル」は振付をつけてナット・キング・コールの「LOVE」をリズムよく歌うなど、3曲を日本・インドネシア・英語の各言葉で披露。来場者らは美しいハーモニーに聞き入った。
毎年恒例のラッキードローでは子どもから大人までが一喜一憂。じゃんけん大会では真剣勝負が繰り広げられるなど楽しい雰囲気に包まれた。
最後は全員でインドネシアの曲「スラバヤ」を歌い、盛況のうちに幕を閉じた。
東京から駆けつけた岡野顧問は40周年を祝うとともに「インドネシアの日本人の歴史をよく学び、先代の苦労を理解しながら時代の変遷とともに改善を進めてほしい」と思いを込めた。(毛利春香、写真も)