日本語学習のバイブル 「みんなの日本語」 分かりやすさが人気
インドネシア人が初めて日本語を学習する際、まず手に取る1冊がある。「みんなの日本語(Minna no Nihongo)」。大学や語学学校などで日本語を学ぶ生徒、教える先生にとって、このテキストは「日本語学習のバイブル」とされている。人気の秘密はどこにあるのか。
インドネシア大学(UI、西ジャワ州デポック)日本語学科を卒業し、現在日本人にインドネシア語を教えているロッシーさんは高校の時に「みんなの日本語」で初めて日本語を勉強した。第2外国語が日本語で、そのテキストだった。「とても分かりやすい。それから日本語が好きになった」と話す。
同書は日本の語学書専門の出版社、スリーエーネットワークが発行する。インドネシアでは2003年にスラバヤで日本文化や語学の普及を行う国際文化交流センター(IMC)が、ライセンス出版を始めた。現在までに「みんなの日本語 初級」1、2など4冊が出ている。IMCの創設者でスラバヤ大学副学長のジョジョック氏は「教える教師にとっても使いやすい内容で、文法解説や作文など他にも周辺教材が多い。今でもこれを超える日本語テキストはない」と話す。
同書はUI日本語学科で使用されるなど、国内に約25ある大学の日本語関連学科の多くで教材として採用されている。毎年約5千部を増刷、基本書となる「1」は累計5万部を超える。もはや日本語を勉強するための定番書なのだ。
「外国人にとって覚えやすい構成になっているのが良かったのでは」とスリーエーネットワークの堀内享子取締役はいう。同書はベトナム、タイ、マレーシア、インド、中国、韓国などでも現地出版している。売上部数ではタイ、マレーシアに次いでインドネシアはベトナムと並んで3番目だが、「今後インドネシアは伸びると思う」と話す。
インドネシアで日本語学習者数は約87万人(国際交流基金13年度調査)。その内の約95%が中等教育者でほとんどが高校生だ。アニメや漫画をきっかけに日本に興味を持った層が本格的に日本語を勉強する。その数は増えている。入門書として「みんなの日本語」が受け入れられている。「日本語は難しいという声もありますが、若い人が多いインドネシアで広まってほしい」と堀内さんは話している。(阿部敬一)