【じゃらんじゃらん】 布に広がる七変化 照子さんの布花教室
アイリスや白バラ、スイートピー。サテンやビロードの生地に花びらの形を鉛筆で描いていく。下書きを切ってから、色とりどりに染めていくと、美しい布花が完成した。ジャカルタ在住の照子イルファンさんは邦人を対象に布花教室を開き、絶妙な染料の組み合わせで色彩を変化させていく布花の醍醐味を伝えている。
布花は花びらの形に布を切り、特殊な染料で色を付け、こてを当て型を作り、花の形へと組み立てていく4段階の作業を経て完成する。
使う道具・材料は、こて、染料、ボンド、生地、ワイヤーだ。ドレスや帽子に似合うコサージュは、花びらが少ないタイプだと約3時間で出来上がる。使う生地はほかにも、光沢を帯びたサテンや厚みのあるシール、薄絹がある。
「太くソフトなバラ」の質感を出したければ、ビロードなどの生地がぴったり。同じバラでも花びらの生地を変えるだけで、季節感や部屋の雰囲気に合った花を作ることができる。
■個性がすべて出る
生地を作りたい花の花びらの形に切った後は、塗り作業に入る。日本から取り寄せた造花染料のシリアス液計9色を絶妙に組み合わせ、塗装液を作る。
バラの花びらのピンクを出すには、ローダミン、緑、茶、黄の4色を混ぜ合わせる。少しずつ入れては紙に試し塗りし、好みの色に調節していく。液の調節は目分量。濃いノーダミンに黄を混ぜることで、優しいピンクが出来上がり、単色にはない深みが刻まれる。
花の色はどの色のシリアス染料を使うかによって変わっていく。切り終わった花びらや葉は、一寸丸ごてなど電気ごてで花びらの丸みをつけたり、葉脈の線をつけたりして完成する。照子先生は「布花は作る人の雰囲気、個性がすべてに出る」と話す。
生徒の坂崎由美さんは「百貨店などで飾られている布花を、自分の手で安く作ることができる」と笑顔。1年目で四つの花を完成させた鈴木紀海子さんは「何百枚も一生懸命切った布が、きれいに出来上がったのを見ると、うれしくてたまらない」と話す。
受講は、1カ月に2回、午前9時―正午、自宅でできる出張講習。受講料は1カ月30万ルピア(材料費は別)。現在、生徒は約20人。
問い合わせは、照子イルファンさん(携帯0856・901・7178、メール teruko_irf@yahoo.co.jp)まで。
◇照子イルファンさん
1946年10月22日生まれ、岡山県井原市出身。「落ち着いた深みのある色に引かれた」。布花を始めたのは、布花作家・山上るい氏の作品がきっかけ。大阪心斎橋にあるブティックのショーウィンドーに置かれていた。照子さんは、山上るい氏の造花教科書を基に手書きで教科書を作成し、教室で使用している。
75年、元日本留学生であるインドネシア人の夫とともに来イ。渡イ後、友人が布花の本を持っていたことがきっかけで布花を再開した。81年、ジャカルタで布花教室を開講。邦人主婦を中心に、口コミで広がり、約100人の生徒が受講する人気教室となった。以来30年、布花を続けてきた照子さんは「自分の手で作る楽しさを知ってほしい」と話す。