「バリ宣言」採択 日ASEAN首脳会議 8年ぶりの共同宣言 重要性増す協力を再定義 きょう東アジアサミット
日本の野田佳彦首相と議長国インドネシアのユドヨノ大統領ら東南アジア諸国連合(ASEAN)の十カ国の首脳は十八日、ASEAN関連首脳会合が行われているバリ島ヌサドゥアのバリ・ヌサドゥア・コンベンション・センター(BNDCC)で日ASEAN首脳会議を開き、「東京宣言」以来、八年ぶりの共同宣言となる「共に繁栄する日本とASEANの戦略的パートナーシップの強化のための共同宣言(日・ASEANバリ宣言)」を採択した。ASEANは同日、米中韓印など対話国と個別に首脳会議を開催。アジアや周辺地域の主要国が一堂に会し、厳戒態勢が敷かれたヌサドゥアのリゾート・エリアでは、野田首相や米国のオバマ大統領、中国の温家宝首相らが次々と二国間会談などを行い、政治・経済・軍事面で影響力を増す中国や民主化の取り組みが注目を集めるミャンマーをめぐる問題などを主な焦点として、躍動するアジア外交が活発に展開された。十九日には米露が初めて参加する東アジアサミット(EAS)や国連の潘基文(バン・キムン)事務総長とASEAN首脳との会談が行われ、一連の首脳会議が閉幕する。
日本とASEANの前回の共同宣言である「東京宣言」は、今年と同様にインドネシアが議長国を務めていた二〇〇三年、ASEAN域外で初めてASEAN加盟各国首脳が集まった東京での日ASEAN特別首脳会議で採択。一九七七年に「心と心の触れあう」関係を構築するとした「福田ドクトリン」の考えを基礎にした日本とASEANの初の外交文書となった。
バリ宣言では「二〇〇三年の東京宣言以来のグローバルな政治経済環境における劇的な変化」との認識を示し、ASEANが「世界の成長エンジン」として認識され、米露も参加する東アジアサミットを主催するなど政治安保面でも重要性を高めている中で、新時代の日ASEAN関係の指針を改めて規定する意義を強調。二〇一五年のASEAN共同体構築に対する「日本の揺るぎない支援」を表明した。
■2兆円のインフラ支援
会議ではASEANが共同体設立へ向けて最優先課題に掲げるコネクティビティ(連結性)の強化のため、二兆円規模のインフラ支援を表明、ASEAN地域の成長を日本に取り込む意欲を示した。
海と陸の回廊、ソフトインフラの整備の三点が柱で、首相は「重要課題として閣僚レベルで優先的に取り組んでいる。ぜひ日本の技術を活用してもらいたい」と強調。当初の事業として三十三案件を選び、資金源としては政府開発援助(ODA)、国際協力銀行(JBIC)の活用や民間資金の導入、アジア開発銀行(ADB)など国際機関との協力などを挙げた。
また連結性支援で「これまで空白地帯だった」というミャンマーについて、政治的に前向きな動きを受け、経済特区の開発などを内容とする総合開発調査の実施に協力するとの方針を明らかにした。
■「海洋安保促進を」
日本との国境線がある東シナ海やASEAN諸国と領有権を争う南シナ海へ海洋進出を強める中国をめぐって関心が高まる海洋安全保障では「日本とASEANを結ぶ海洋の平和と安定が地域の繁栄にとって必要不可欠」と強調。
宣言で掲げた五つの戦略の中で、「地域における政治および安全保障協力の強化」を一番初めに挙げるとともに、南シナ海問題に直接言及。国際法の順守の重要性を訴え、中国が反発している、法的拘束力を持つ南シナ海問題解決のルールである行動規範の策定を「期待する」と明記し、中国をけん制した。
野田首相は八年ぶりの共同宣言を採択したことについて「歴史的な会議」になったと強調。二兆円規模のインフラ支援を表明し、ASEANが共同体設立へ向けて最優先課題に掲げるコネクティビティの強化に協力し、「アジアの成長を日本に取り込む」との意欲を示した。
社会文化面では東日本大震災などの教訓を生かし、ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)などを通じた防災協力の強化を表明した。
◇共同宣言で明記された「地域の平和、安定および繁栄をさらに促進するため」の五つの戦略
(1)地域における政治および安全保障協力の強化
(2)ASEAN共同体構築に向けた協力の強化
(3)日本とASEANの紐帯を強化するための双方の連結性の強化
(4)災害に対してより強靭な社会の構築
(5)地域の共通課題および地球規模の課題への対処