【写真劇場】無知が差別生む
妊娠10カ月目の妻、ウミ・サラマさん(32)のお腹が大きくなってきた。自営業、ズルキフリさん(34)は、子どもの頃を思い出した。家族との時間があまりなかった。両親はハンセン病だった。幼稚園に上がると同時に、祖母に預けられた。
「お前もあの病気にかかる」。ハンセン病の感染力は弱く、遺伝もしない。だが、皆怖がり後ろ指をさした。もうすぐ産まれる子どもが健康であることだけを願う。「子どもは差別をなくす生き証人だ」
バンテン州タンゲラン市にあるハンセン病のシタナラ専門病院。その裏に、ハンセン病患者と元患者の約千世帯が暮らす町がある。指が曲がったり、義足をはめたりする人の姿が、治療が遅れた人の多さを物語る。
無職、イドゥリス・スヘルディさん(37)は左足を切断した。仕事に就けず、物乞いで生活費を稼ぐ。毎日、物乞いをする場所まで義足で自転車を漕いでいく。「病気は治っているし、動くこともできる。でも仕事はない」
保健省によると、国内のハンセン病患者数は2万人以上。シタナラ病院のセレスティヌス・エイギャ・ムンテ医師は、完治するハンセン病は医療の問題ではなく、差別の問題だと指摘。地方では医師の中でも、感染を恐れ治療をしたがらない人がいるという。「無知が治療を遅らせ、差別を生んでいる」と話した。(上松亮介、写真も)