総選挙と大統領選 同時開催へ 次回19年から導入 憲法裁判決 賢明、効率的に投票権を行使
選挙の効率化を訴えた大統領選挙法(2008年)の違憲審査で、憲法裁判所は23日、有権者の賢明な選挙権行使を保障する憲法に反するとして同法の一部条項を違憲と認定、大統領選と総選挙を同時に開催し、効率化を図るとの判決を下したと発表した。今年の総選挙は4月に迫っており、19年の次回選挙から適用する。
この違憲審査は、インドネシア大学政治社会学部講師のエフェンディ・ガザリ氏ら識者が組織した「選挙同時開催のための市民連合」が昨年1月に請求したもの。
5年ごとに同じ年に国会(DPR)、地方代表議会(DPD)、州、県・市議会の四つの議会選挙と大統領選挙を実施し、さらに各地方ごとに州、県知事、市長の首長選挙がそれぞれ別の時期にあり、膨大な資金が一連の選挙に投じられている現状を問題視。資金調達の過程で政党が公金を不正流用し、国家に損害を与える汚職が横行してきたと指摘した。
特に公共事業予算から政党が運営資金を不正流用し、見返りに官僚の地方首長選出馬を支援するなどの癒着も発生。ガマワン内相が「東ジャワ州知事選の選挙戦費用が1兆ルピアに達した」と指摘したことを引用し、政治にかかるコストが巨額になり過ぎたと批判した。政治エリートによる金銭のばらまきが買票を引き起こし、その結果、有権者が賢明かつ効率的に候補者を選ぶ権利を侵害していると訴えた。
この訴えに対し、憲法裁は、総選挙と大統領選の同時開催は憲法で規定された大統領制を強化することになると強調。議会が一方的に大統領を罷免する権限はなく、政府の効率的な運営は議会を構成する政党ではなく、直接選挙で選ばれた大統領が主導すべきだとし、議会工作に翻弄されない大統領を生み出すためにも同時開催が望ましいと説明した。
さらに同時に実施することで国家予算の節減になると指摘。時間と労力も減らせるほか、選挙をめぐる市民間の対立も回避できるとの見解を示した。
また同時開催の利点として、有権者が支持政党の擁立する大統領候補を選びやすくなると指摘。総選挙の結果に基づき、大統領候補選定をめぐる政党間の駆け引きも不要になり、有権者が賢明に選挙権を行使できるようになるとした。大統領候補の擁立要件などについては、大統領選挙法の改正で対処することになる。
しかし、憲法裁は州、県知事、市長の各地方首長選挙も、総選挙や大統領選と同時に実施すべきだとの訴えは退けた。
判決に対し、エフェンディ氏は「国民の勝利」と歓迎。しかし、憲法裁は昨年5月に今回の違憲判断を下していたが、公表を8カ月も遅らせていたことが明らかになったと指摘。今年の選挙に適用しないよう、政党から憲法裁へ圧力が掛かった可能性もあるとした。(配島克彦)