アカデミー賞候補に 9・30事件の真相追求 映画「アクト・オブ・キリング」

 米映画芸術科学アカデミーは16日、第86回アカデミー賞のノミネート作品を発表、インドネシア共産党(PKI)系将校のクーデター未遂とされる1965年9・30事件以降に発生した、共産党支持者の粛清を描いた「アクト・オブ・キリング」(インドネシア語題・ジャガル)が長編ドキュメンタリー賞候補5作品の一つに選ばれた。発表・受賞式は3月2日(インドネシア時間3日)。
 米国出身のジョシュア・オッペンハイマー監督(39)はノミネートを受け、安全を確保するため身元を明かしていない共同監督らインドネシア側の制作スタッフ約60人に謝意を表明。「インドネシア国内で、政府関係者に対する真相究明を求める動きの一助となってほしい」と話した。 
 映画は虐殺の加害者の証言や再現シーンを中心に、インドネシア現代史の闇に葬られた事件の真相をえぐり出そうと試みた話題作。世界各地の映画祭などで35の賞を受けた。日本でも昨年10月、山形国際ドキュメンタリー映画祭のインターナショナル・コンペティション部門で、117カ国・地域から応募された1153作品の中から、2位に当たる山形市長賞に選ばれた。
 9・30事件をめぐっては、容共路線のスカルノ初代大統領が失脚し、陸軍少将だったスハルト元大統領が実権を掌握した65〜66年、スマトラ、ジャワ、バリの3島を中心に、全国各地で共産党支持者とみなされた50万〜200万人が虐殺されたとされる。
 スハルト政権以降、政府は共産党員の粛清が国家統一のために必要だったとの見解を固持しており、真相究明に消極的。国軍による虐殺への関与など史実は謎のままだ。故サルウォ・エディ・ウィボウォ陸軍特殊部隊司令官(当事)を義父に持つユドヨノ大統領をはじめ、政府関係者の多くが虐殺関与者の親族である背景も指摘されている。
 インドネシアでは12年11月に初公開。上映禁止を避けるため映画検閲局に許可を申請せず、インドネシア人共同監督が中心となり、招待客を対象に小規模な上映会を100カ所以上で開いたり、無料でDVDを希望者に配布したりした。二つの上映会では、主催者が匿名の人物から脅迫を受けた。
 両監督は現在、共産党支持者の粛清を被害者の視点から描いた次作「ザ・ルック・オブ・サイレンス」の編集作業を進めているという。(宮平麻里子)

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