コモド島、新七不思議に選定 カラ前副大統領が奮闘 キャンペーン功を奏す
インターネットなどで世界中の人々の投票で選ぶ「新世界七不思議」で、主催者の新世界七不思議財団(本部・スイス)は十二日、インドネシア代表として市民団体などがプロモーションを行ってきたコモド国立公園(東ヌサトゥンガラ州)が選定されたと発表した。同財団の運営をめぐり、インドネシア政府は一時不参加を表明したが、国内の支持団体の熱意に押されたユスフ・カラ前副大統領がコモド大使になることを快諾。ユドヨノ大統領や閣僚、携帯電話オペレーターなどを巻き込み、投票締め切り目前のキャンペーンを大々的に展開した結果、最終的に新七不思議認定を勝ち取った。
財団による新七不思議の選定は今回が二回目。世界各地から約四百四十カ所が応募。〇九年一月に候補を二十八カ所に絞り、コモド国立公園のほか、ブラジルのアマゾン川、ベトナムのハロン湾、アルゼンチンのイグアスの滝、韓国のチェジュ島、南アフリカのテーブルマウンテン、フィリピンのプエルト・プリンセサ海底公園が選ばれた。集計確認を経て来年初頭に公式発表される見込み。
観光創造経済省(当時文化観光省)は二〇〇八年、インドネシアからの新七不思議の候補地として、世界最大のカルデラ湖の北スマトラ州トバ湖、海面下の活火山・アナック・クラカタウ火山とともにコモド公園を申請。財団は投票と専門家の意見を参考に、同公園をインドネシアの最終候補に決めた。
しかし、昨年十二月、観光省と主催者の間で新七不思議のライセンス料やインドネシア側パートナーの選定などをめぐる対立が激化。同省は今年二月、新七不思議キャンペーンへの不参加を表明した。
キャンペーンは市民団体「コモド応援隊(P2K)」に引き継がれたが、政府からの支援もなく、一時は絶ち切れ寸前に陥った。そこで起死回生を図り、今年十月、インドネシア赤十字総裁を務めるカラ前副大統領に支援を要請。カラ氏がコモド大使に就任することを快諾。カラ氏がコモド公園で木の杖を持ち、コモドドラゴンと触れ合う姿が大きく取り上げられ始めてから、盛り上がりはピークに達した。
政界に依然として影響力を持つ有力者のカラ氏は、ジェロ・ワチック観光文化相(当時、現・エネルギー鉱物資源相)に支援を要請。ユドヨノ大統領には直談判し、官邸記者たちの前で投票を呼び掛けてもらうことに成功した。
投票は重複投票も可能で、主に携帯電話のショート・メッセージ・サービス(SMS)を通じて行われることから、携帯電話オペレーター各社代表を集め、投票SMSは一部無料とするなど協力を取り付けた。カラ氏の就任前は数千票だったが、最終的に二億票以上を獲得。人海戦術による投票で新七不思議入りを勝ち取った。
カラ氏は「コモド国立公園が新七不思議に選ばれたことは、インドネシアの功績。インドネシア全体が協力して取り組めば、不可能なことはない」と誇らしげに語った。
十月の内閣改造で就任したマリ・パンゲストゥ観光創造経済相は「インドネシアの誇り」と歓迎し、コモド島の保護に一層力を入れると話した。
■日帰り便で人気上昇
コモドドラゴンが生息するコモド国立公園は一九九一年、専門家の調査を経て、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産(自然遺産)に登録されている。しかし、交通手段も限られており、集客には結びついていなかったという。
東ヌサトゥンガラ州西マンガライ県によると、同公園への来園者は〇九年に一万五千人だったが、一〇年には四万三千人に増加。今年は五万人に達すると見込まれている。中型ジェット機などでバリ島からの日帰り便が就航し、日本の大手旅行会社がツアーを組むなど、海外からの観光客も急増。ジャカルタなどバリ島外に住む邦人の間では、週末、コモド島を満喫し、日曜日にはバリのホテルでゆっくり過ごすという「コモド・ホリデー」の人気も高まっているという。