【テーマ2014選挙】(1)バス、鉄道の着実な整備を
今や世界一、二といわれるジャカルタの慢性的な交通渋滞。今年は都市高速鉄道(MRT)の工事の影響で深刻化は確実だ。排気ガスによる大気汚染も年々ひどくなる。根本的な解決策はバス、鉄道の整備と、繰り返し指摘されてきた。
まず、バス。「もう30分近く待っているけどまだ乗れない」。中央ジャカルタのドゥクアタス駅。東ジャカルタの自宅に帰るハルトノさんは毎日のように列に並んでトランスジャカルタを待つ。2004年に始まった専用バスレーンも、車両不足に一般車のレーン進入で遅れが慢性化、市民の我慢は限界に来ている。
ジャカルタ州政府は11年にフィーダーバスで利便性をアップさせ、他会社のバスの乗り入れも始めた。今年はバスの台数を倍増させる予定だ。
■始まった鉄道建設
鉄道網の建設こそ喫緊の課題。今年やっと建設が本格化しそうだ。州政府も特に力を入れている。
1986年に構想が決まり、97〜98年のアジア通貨危機による資金難で計画が延期されていたMRTは昨年ようやく建設が始まった。日本政府は先月、予定されていた円借款の供与を発表した。MRTは南北、東西両線が完成すれば1日100万人以上の乗客を運ぶ。
03年に始まったモノレール建設計画は2本。ブルーラインは東ジャカルタのカンプンムラユから西ジャカルタのタマンアングレック、環状線のグリーンラインはスディルマンやクニンガンを回る。大口投資家が投資計画を凍結したため運営企業の資金がなくなり、11年に頓挫。今もスナヤンなどで鉄筋むき出しの橋脚が並ぶが、昨年10月、中国政府の協力で総工費8兆ルピアで建設再開が決まった。完成はMRTが18年、モノレールが17年とされている。
一方、空港線は将来スカルノハッタ、ハリム両空港を結ぶ計画で、主に在来線に乗り入れるが、今月にもスカルノハッタとバトゥチェペル間で着工する。
■道路用地買収が停滞
ジャカルタは一日700万人が流入し、200万台の自動車が走る。年間の車の販売台数は100万台を超え、今年は自動車の台数が道路面積を超える「グリッドロック」になると言われるほどだ。鉄道工事の影響で、州内の車両速度は今の1時間当たり10〜12キロから8〜10キロになると予想されている。
強制的な土地収用が可能だったスハルト時代に比べると、以降は道路建設自体が大幅に減った。民主化の結果、土地所有者の反発が強く買収交渉が軒並み長期化するためだ。近年の増加量は年率0.01%ほどで、12年時点のジャカルタ州内の道路面積は6955キロ、目標の1万2千キロに到底及ばない。そういう中、ジャカルタの外環高速道の夏の完成は朗報だ。
■今できることもある
渋滞現場で観察すれば原因は何か一目瞭然のケースが多い。例えば、ジャカルタ特別州のジョコウィ知事が実施した中央ジャカルタ・タナアバン市場の移動屋台(カキリマ)一掃で、周辺の渋滞は改善された。局所的な対策でも流れをスムーズにすることが可能だ。
道路構造の改善が必要な場所も少なくない。スディルマン通りの南行4車線に3車線が合流する場所がある。合流後も4車線のままでは渋滞するのが当然。合流路を減らしたらどうか。信号切り替えの非効率さや、強引な路線変更など運転手のマナーが原因の渋滞も多い。当面、小規模でも効果が見込まれる解消策を積み重ねていくことが重要だろう。(高橋佳久、写真も)
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選挙の年に、衆目の一致する国政の課題、難問を6回に分けて掲載します。
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