【デジタル羅針盤】1分間の暇つぶし
「暇だ」とか「暇をつぶす」とか言った時、この「暇」という言葉は、どのくらいの時間を指すだろうか。個々人の感覚次第だが、一般的には30分以上の、何もせずに過ごすには厳しい、ある程度まとまった時間を想定する人が多数ではないか。
しかし、この感覚が近年、大きく変わってきているのかもしれないという指摘がある。
確かに普段、付き合いのあるインドネシアの10代、20代の若者をみていると、もっと短い、5分未満の時間にも「暇(bosan)」という表現を用いて、スマートフォンを取り出してはメールやゲームをしているようだ。
インターネットでのサービスは、特にスマートフォンでの利用を前提としたものでは、短時間で楽しめるようにするというのが一つの定石だ。
ゲームは長時間のプレイが必要な大作よりも、数分で一ゲームが終わるシンプルなものが好まれる。メディアの記事も短くするのが普通な上、長い記事の要点だけを自動的に抜き出すアプリケーションまで存在する。
忙しい時代に生きる今の人間が自然にそう望んだ結果、こうしたサービスが生まれたのか、スマートフォン向けに最適化した手短なサービスに人間の側が慣らされたのかは分からない。
だが、考えてみると私自身も、アパートの一階にあるコンビニに行く時には必ずスマートフォンを持っていく。エレベーターやレジの待ち時間の「暇」を潰すためだ。
一部で「スマホ依存症」という言葉が使われだしたように、こうした状態は不健全なのかもしれないし、ぼんやりと脳がリラックスした状態にこそ有用なアイデアが生まれるのかもしれない。特に子どものいる家庭では、週に一度ぐらいオフラインデーを作るのも手だろう。
ただ、世間全体の潮流はそう変わらないだろうし、この変化が悪いものとも限らない。何より文句を言っているよりは活用した方が生産的だ。
そういうわけで、日本語学校を経営する私としては、カルフールの長いレジの行列の間に勉強してもらえるよう、1回3分でできる映像教材などを構想している。(IkuZo!日本語・マンガ学校校長、元じゃかるた新聞記者 福田健太郎)