副大統領を任意聴取 支援額膨張で追及 汚職撲滅委 センチュリー銀救済
2008年に破綻した旧センチュリー銀行(現ムティアラ銀行)の救済に絡み、汚職撲滅委員会(KPK)は23日、救済政策を決定した当時の中銀総裁であるブディオノ副大統領を任意で事情聴取した。副大統領は、当時のリーマンショックがインドネシア金融界に波及するのを阻止したと成果を強調。同銀への公的資金注入が当初算定額の約10倍に膨らんだのは、破綻後に同銀を監視下に置いた預金保証機構(LPS)の責任だと指摘した。
KPKは約7時間にわたり、中央ジャカルタの副大統領官邸で副大統領を取り調べた。大型汚職事件の独立捜査機関として、警察や検察を上回る強大な権限を付与されているKPKには、正副大統領を訴追する権限もあるが、副大統領を聴取するのは初めて。
ブディオノ副大統領は聴取後、記者会見で改めてセンチュリー銀救済について説明。中銀は08年11月、リーマンショック直後に経営破綻したセンチュリー銀の救済を決定したが、この政策は当時の経済状況を反映したものだと強調し、取り調べの質問項目も同銀への短期融資に限定されたと話した。
救済を決定した同年11月20日は「長い1日だった」とし、副大統領官邸でカラ副大統領、スリ・ムルヤニ蔵相=金融部門政策委員会(KKSK)委員長兼任=らが出席した会議が開かれ、中銀総裁としてインドネシアの経済、金融の状況を伝えたと話した。
当時、訪米中のユドヨノ大統領に代わり、この会議を開いたカラ氏が最近になり「会議でインドネシアに危機はないとの認識で一致した」と証言したことに反論。危機波及の可能性が会議出席者の共通認識だったことを強調した。
同日夜に決定した救済策の理由については「経営破綻し、債務不履行に陥った銀行が出た場合、金融界の危機に発展する危険性が高いと判断した」と説明。同銀の自己資本比率が中銀内規で定める貸与条件の8%を大きく下回っていたにもかかわらず、短期融資を承認したのは「中銀と金融部門政策委(政府側)が合意したからだ」と強調した。
これまで国会が問題視してきた支援額の膨張については「預金保証機構が同銀を管理下に置いてから発生したこと。銀行の監視者(中銀担当者)、センチュリー銀、預金保証機構の間で何が起きたのか」と話し、責任はあくまで当事者が負うべきだとの見解を示した。
KPKはブディオノ副大統領に先立ち、21日にカラ氏を事情聴取。カラ氏も副大統領と同様に、支援額膨張の責任は管理者の預金保証機構にあると主張していた。
KPKは5日、同銀元オーナーのロバート・タントゥラー受刑者から10億ルピアを受け取った疑いでブディ・ムルヤ中銀元副総裁を逮捕。当時の中銀幹部の捜査を本格化させる姿勢を示している。