宗教相「対立は当たり前」 少数派排斥を正当化 暴力助長に懸念
スルヤダルマ・アリ宗教相が15日夜、西ジャワ州バンドンであったイスラム学者との会合で「宗教間の対立があるのは当たり前だ」との認識を示した。全国で相次ぐ少数宗教排斥の正当化で、強硬派による暴力を助長するとの懸念が出ている。 一貫した少数派軽視の発言には、総選挙を見据えた保守層からの集票稼ぎが透けて見える。
地元メディアによると、スルヤダルマ宗教相はスピーチで「神が人間に怒りの感情を授けたかぎり、対立は常にあり得る」と説明。「だが、ムスリムは怒りを我慢すれば、神から評価される」などと続けた。
インドネシアについて、各宗教に最も寛容な国であるとする一方、「問題は小さいはずだが、焚き付けられれば大きくなる」と警告。宗教問題のぼっ発をあおる者に注視するよう宗教指導者らに呼び掛けた。
人権団体「多様性のための報道連盟」のタントウィ・アンワリ氏は取材に「被害者の視点が完全に欠けた発言」と指摘。宗教相らによる共同大臣令で活動を実質非合法化されたアフマディヤの例を挙げ「政府はすべての宗教に公平になるべきだ」と批判した。
スルヤダルマ宗教相は少数宗教に対する差別的発言を続けてきた。イスラム・シーア派やアフマディヤを「イスラム異端派」と断言し、自治体に教会を閉鎖されたキリスト教団体は「問題をつくる集団」と見なしてきた。
なぜ大臣として不適切な発言を続けるのか。学術団体「宗教間対話・平和のためのアブドゥルラフマン・ワヒド・センター」のアフマッド・スアイディ代表は「自身の近くにいる特定勢力の偏った意見を重視する傾向がある」と指摘。来年の選挙を控え、首都圏を中心に保守層を取り込もうとしているとの見方を示した。
スルヤダルマ宗教相はイスラム政党・開発統一党(PPP)の党首。総選挙では国会議員候補にイスラム強硬派団体・イスラム擁護戦線(FPI)のムナルマン報道官を擁立し、8月にはFPIの総会に出席、強硬派との蜜月を際立たせた。マドゥラ島のシーア派避難民の問題でも、PPPの地盤でもある同島の保守派の求めに応じ、シーア派に改宗を迫っているとみられる。(上松亮介)