【じゃらんじゃらん特集】建国の原点は学生寮 「青年の誓い」博物館 中央ジャカルタ・クラマット
1928年10月28日、第2回青年会議が「一つの国家、一つの民族、一つの言語」をうたう「青年の誓い」の宣誓とともに閉会した。オランダ植民地時代から今日まで多民族国家インドネシアを支えた建国の精神が議論された現場は小さな学生寮だった。
青年の誓い博物館は独立記念塔(モナス)からほど近いクラマット・ラヤ通りにある。建国の精神を今に伝える博物館だが、タクシーの運転手も場所を知らない。住所を頼りに周囲を探すと、周りの建物に埋もれるようにして、伝統的な瓦屋根の小さな建物にたどり着いた。
博物館は、85年前に青年の誓いが宣誓された場所だが、当初は近隣の学校に通う学生向けの寮として建設された。学生らの芸術活動の拠点になり、次第に民族主義に目覚めた学生らが集まるようになった。
学生寮がインドネシア建国の精神を育んだ。植民地政府が植民地経営に必要な現地人エリートを養成する過程で、青年らが民族主義や自由主義を学び、青年らが独立運動を主導することにつながった。
第2回青年会議後はしばらく花屋やホテルなどとして利用された。独立後、商業省やジャカルタ州政府などに所有が移り、1983年にようやく博物館として一般に公開された。
閑散とした館内には青年らの議論が青年の誓いに至る経緯を説明するパネルのほか、第2回青年会議閉会時にスプラットマンが後に国歌の原曲となる「インドネシア」を披露した際の様子が人形で再現されている。
青年の誓いから85年目の節目の日を前にしても博物館を訪れる人は少ない。建国の精神はすでに人々の胸に宿っていて、改めて振り返る必要もないということだろうか。口角に泡を飛ばして国家の理想像を語った青年らは草葉の陰から何を思うのか。(田村隼哉、写真も)