年内妥結目標を維持 「大筋合意」至らず TPP
バリ州ヌサドゥアで開かれた環太平洋連携協定 (TPP)交渉の首脳会合は8日、「年内に妥結するため、 残された困難な課題の解決に取り組む」との首脳声明を採択し閉幕した。ただ、交渉に参加する12カ国には依然として意見の相違があるとされ、年内妥結まで残された時間は少ない。
安倍首相は8日の首脳会合後、記者団に対し「会合の結果、交渉妥結に向けた大きな流れができた」と語り、規定路線の年内妥結への意志を見せた。安倍首相は難航する分野はあると認めたが、最終的な交渉の詰めでは首脳の政治的判断が必要になるとの考えを示した。難航分野の一つである特許、著作権の保護に関する「知的財産」分野の中間会合を日本で開催すると明らかにした。
関税撤廃項目の割合を90%台後半まで引き上げるかをめぐっては、各交渉国の機微な部分に配慮した上で政治的判断をしていくとして、具体的な方策には言及しなかった。政府・自民党はコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5項目を関税撤廃の「聖域」としてきたが、交渉の過程で聖域切り崩しもありうるとの立場に変化した。
交渉に合わせてバリを訪れた自民党の西川公也TPP対策委員長は6日、甘利TPP担当相との会談後記者団に対して、重要5項目を「聖域」から除外するかどうかを検討しなくてはならないと明言。5項目を最終的な防御線と考えていた日本国内の農林水産業者に衝撃が広がった。
参加国は今回の首脳会合で年内妥結の足がかりになる「大筋合意」を宣言することを目標にしてきた。だが、オバマ米大統領が国内の政府機関閉鎖問題で欠席したことに加え、先進国と新興国間の意見の相違などが交渉を難しくしたとみられる。
ロイター通信によると、米通商代表部のフロマン代表は8日、「知的財産」のほか、国有企業の取り扱いをめぐる「競争」「労働」「環境」の分野で交渉が未決着と明らかにした。さらに今年12月に再びバリで開催する世界貿易機関(WTO)閣僚会合の会期中に、並行してTPP閣僚会合を開催する考えを示している。(バリ州ヌサドゥアで吉田拓史)