【デジタル羅針盤】 悪ふざけはこっそりと
最近、日本のアルバイト店員が勤務する店の設備や商品で悪ふざけをした写真をツイッターなどに投稿し、批判を受けた店側がアルバイト店員を解雇したり、フランチャイズ店を閉店したりする騒動が続いている。
自らの悪事をインターネットで明らかにして、批判を受けるケースはあったが、以前は批判対象となった行為が悪事と呼べるものであった。
例えば試験のカンニングは、大多数の真面目な受験者にしたら噴飯ものだし、飲酒運転は人の命を奪いかねない危険な行為だ。発覚した以上、社会的な制裁を受けるのも仕方ないという部分がある。
だが、最近、話題になっているのは店の大型冷蔵庫に入るなど悪事というよりは、悪ふざけという程度のものがほとんど。学生のアルバイト店員に店への高い忠誠心を求めるのは無理な話で、この手の悪ふざけは以前から行われてきたはずだ。
そのころは個人が情報発信できるインターネットもなかったし、気軽に撮影ができるカメラ機能付きの携帯電話もなかった。だから、こうした悪ふざけは仲間内の話題にしかならなかった。
あるいは逆に手元に写真を撮れる携帯電話と仲間に向けて発信できるインターネットがあるから、馬鹿なことをして写真を撮りたくなるのかも知れない。
いずれにせよ、今はこうした悪ふざけが写真付きで見えてしまう。
もちろん、今まで明るみに出ていなかったことが、出てくることで社会が改善されることは多い。家庭内暴力や虐待は近年、公に知られるようになり、少しづつではあるが対策が進んでいる。
では、この件では飲食店の衛生管理が向上するかといえば、せいぜいアルバイト店員への教育項目が増える程度。そのうち、悪ふざけをする側もインターネットへの投稿は控えるようになり、もとの見えない状態に逆戻りするだけだ。
ところで、インドネシアの飲食店では同様の悪ふざけは起きていないのだろうか。ツイッターなどでちょっと探してみたが、それらしい投稿はなかった。真相はどうにせよ、知らずにいた方がよさそうだ。(IkuZo!日本語・マンガ学校校長、元じゃかるた新聞記者 福田健太郎)