【デジタル羅針盤】 いらないものは
新聞紙面上に書くのも何だが、若い人の間には「新聞なんていらない」という声が増えている。だが、このように「いらない」と言われている間はまだまだ新聞は大丈夫な気がしなくもない。
なぜなら、本当にいらない物は不要論が唱えられることもなく、気付かない間になくなっているからだ。
最近だと私のノートパソコンからはCD・DVDドライブがなくなった。買い換える時にも、CDドライブについて深く考えることもなかった。
購入先のお店の特典でUSBケーブルでつなぐ、外付けのCDドライブをもらったが、使ったのはほんの数回だけだ。これなら本体にドライブをつけて、無駄に重く、大きくする必要がないとメーカーが判断するのも当然だ。
パソコンの記録媒体で言えば、フロッピーも、MOも、ZIPもいつの間にかなくなっていた。カメラもデジタル化してファインダーのある機種は圧倒的な少数派になった。おそらく思い出せないだけで、パソコン回りのもので、なくなったものが他にもたくさんあるはずだ。
そして、こんなにも皆が使っていたのに気がつくとなくなっていたもののリストの次に名を連ねるのは、キャリアメール(携帯電話会社が提供する携帯電話用のメールアドレス)やSMSではないかと思う。
スマートフォンユーザーの間では、これらはすでにLINEなどのメッセージングサービスに代替されつつある。SMS機能がない携帯電話といわれると「まさか」と思われうかもしれないが、フロッピードライブがないパソコンだって「まさか」だったのだ。
主要メーカーで最初にフロッピーを切り捨てたのはアップルだった。当時、同社のCEOだったスティーブ・ジョブズ氏は不要なものを削ぎ落してシンプルで使いやすいものを作る達人だった。
ジョブズ氏は今や故人だが、惜しむ声、懐かしむ声は絶えない。ジョブズ氏が切り捨てたフロッピーと違い、それだけ同氏が必要とされていたことの証左であろう。
IT関係はこの10年、20年の間に急速に進歩しただけに、他の分野よりも移り変わりが早かったというだけで、こうした栄枯盛衰、流行り廃りは何にでも共通だ。
自分や自分の会社、業界がひっそりと消えていくことがないかを考えると、ちょっと恐ろしい気がする。(IkuZo!日本語・マンガ学校校長、元じゃかるた新聞記者 福田健太郎)