【デジタル羅針盤】 無料サービスの対価
フェイスブックなどのSNSの投稿、閲覧データを解析して、利用者が関心を持っているだろうニュースを届けてくれる「Gunosy」などのサービスが人気を集めている。精度はまだまだな部分もあるが、なかなか面白い。
このように過去の行動から利用者の特性を推測して、利用者に適した情報を提供するというのは、インターネット上のサービスでは珍しいことではない。検索サイトに表示される広告やネットショッピングサイトの商品おすすめが代表的な例だ。
便利な機能である反面、個人情報が収集されることに対する懸念や反発もあった。それが、元CIA職員のエドワード・スノーデン氏の内部告発により、杞憂ではないことが示された。
告発によると、米国政府は通信会社から通話記録を入手したり、インターネット事業者からも利用者のデータの提供を求めていたそうだ。
個人情報がしかるべき方法以外で利用されているという状態自体は、多くの人が予想していただろう。だが、改めて事実を突きつけられるとショックは大きい。
SNSも検索サイトもショッピングサイトも、ますます多くの個人情報を収集しようとしている。そのためにメールやゲーム、インターネット上のデータ保管スペース、果ては無線LANの利用の権利まで「無料」で提供している。
だが、当然、真の意味で無料なものはない。テレビ放送やフリーペーパーが広告収入で成り立っているように、こうした「無料」サービスは個人情報という対価を支払うことで成り立っている。
これを理解した上で、個人情報を提供し、その見返りに利便性を享受しているならまだ良いのだが、個人情報という対価は見えづらいため、全く意識せずに「無料」サービスを利用している人も多いはずだ。
ほとんどの場合、サービスの登録時に、誰にでも分かるような形で個人情報の収集について説明を行なっていない。
仮に分かりづらいところに書かれた難解な説明を読んで納得していても、スノーデン氏の告発の通り、情報が国の諜報機関に提供されていたというなら完全な契約違反だ。
とはいえ、ネットのさまざまなサービスを全く使わずに生活するのももはや困難という人が大半だろう。お金を使うときに無駄にならないか考えるように、個人情報という資産を使うときにも、本当に必要かどうか考えるしかない。(IkuZo!日本語・マンガ学校校長、元じゃかるた新聞記者 福田健太郎)