「未来どこにもなかった」 路頭に迷うロヒンギャ一家 マレーシアから豪州目指す
難民としての受け入れを求め、豪州を目指していたミャンマーの少数民族ロヒンギャの一家18人がジャカルタで路頭に迷っている。自国で非国民、外国で不法移民とされてきた一家は8日、駆け込んだ法律擁護協会(LBH)事務所で行き場のない不安を吐露した。
「未来はどこにもなかった」。モハマド・アニフさん(38)は流ちょうなマレー語で振り返った。1980年代、一家は仏教徒住民との対立がきっかけでミャンマーを出た。以来マレーシアで暮らしたが、難民条約を批准していない同国では不法移民とされ、将来を思い描けなかった。難民受け入れに比較的寛容な豪州行きを決めた。
先月13日、マレーシアから北スマトラ州メダン市に船で入った。インドネシア国籍の男に「豪州まで連れて行ってやる」と言われ、貯めてきた約4万1千リンギット(約127万円)を払った。だが4日、ジャカルタで車から降ろされ、男は行方をくらました。
一家は4日、国連高等弁務官事務所(UNHCR)への難民申請を済ませたものの、滞在場所などは提供されなかった。中央ジャカルタのスンダ・クラパ・モスクに一時避難、LBHに助けを求めた。アニフさんの母ファティマさん(63)は体の不調を訴える。LBHは食糧や医療の支援を呼び掛けている。
インドネシアも難民条約を批准しておらず、一家の合法的な滞在は望めない。国連からの難民認定を受けないかぎり、受け入れ国に行くこともできない。国連への難民申請から認定までには何年もかかる。
豪州を目指す難民申請者が経由するインドネシアでは、申請者流入が増加の一途をたどる。5日のイ豪首脳会談で、関係国とともに協議することで一致したが、具体的な解決策が見つかるかどうかは不透明だ。
LBHのフェビ・ヨネスタ弁護士は、国内に滞在する難民申請者への医療や子どもの教育を支援するようインドネシア政府に求める。「本来加入するべき難民条約に入っていないインドネシアは、最低限の権利を守ることで国際的な責任を果たすべき」と話した。(上松亮介、写真も)
◇ロヒンギャ イスラムを信仰し、ミャンマー西部ラカイン州のバングラデシュ国境 付近に住む。約80万人いるとされるが、無国籍として扱われきた。UNHCRに よると、昨年からの仏教徒住民との衝突で約14万人が避難民になり、インドネシ アでも各地で収容されている。