【デジタル羅針盤】 日本語は縦か横か
じゃかるた新聞の紙面を見て、自分が書いたこのコラムを確認するといつも軽い違和感を覚える。執筆段階ではコンピューターに向かい横書で書いていたものが、縦書となって出てきているからかもしれない。
伝統的な日本語はもちろん縦書だ。新聞、小説、国語の教科書は縦書きで書かれている。一方、コンピューターの世界は日本語でも大半が横書。縦書なのは雑誌や新聞をレイアウトするソフトぐらいかもしれない。
コンピューターもインターネットも欧米の横書文化圏で生まれたもので、どの横書スタイルにそのまま日本語を乗っけたからだが、数字、アルファベット混じりの日本語を表記するには、横書の方が読みやすいことも理由の一つではないだろうか。
総務省は縦書のブラウザ(インターネット閲覧ソフト)の開発に関する分科会を主催。ウェブページを作成する標準規格HTML5で縦書をサポートするように標準化団体に働きかけている。
ブラウザ全体を縦書にしても読みにくいだけだろうが、例えば著作権切れの文学作品が読める青空文庫で、今は横書表示されている様々な小説が、縦書で表示できるようになったら、より読みやすいかもしれない。
こうなると電子書籍も専用の端末やアプリを使うのではなく、ブラウザを使うという選択肢も出てくる。
一方で、少なくともディスプレイを通して読む日本語に関しては、縦書など捨ててしまえばよいという主張も少なくない。
電子書籍も多くの規格は欧米発で横書が前提とされている。縦書の日本語のレイアウトに対応するにはさまざまな改良が必要となる。
こうしたデメリットを受け続けるのが少数派ならば、横書でも構わないという立場のほか、横書前提で作られた電子機器で縦書は読みにくいという意見もある。
過去にも日本語の表記法に関する議論は繰り返されてきた。タイプライターが普及した時には、新技術への対応という観点から漢字の廃止が訴えられたこともあるそうだ。
ディスプレイを通じて横書の日本語を読む時間は、紙媒体で縦書の日本語を読む時間より長いという人も多いし、こうした人は今後増える一方だろう。
また、私の本職は日本語学校の経営だが、外国人向けの日本語教科書はほぼ全てが横書で、日本語能力試験の問題も読解用の長文も含め全て横書だ。
二者択一の問題ではないので、縦書も横書も併存するのだろうが、IT化、国際化への対応の中で、横書が日本語の形も変わっていくはずだ。(IkuZo!日本語・マンガ学校校長、元じゃかるた新聞記者 福田健太郎)