福祉正義党、一転賛成 内部で不協和音も 来週にも燃料値上げ
連立与党ながら燃料値上げに反対していた国会第4党の福祉正義党(PKS)は13日、政府与党の圧力のなか再び賛成に転じた。値上げの前提となる補正予算案について、国会は17日の審議終了を目指す方針で、政府は可決され次第、値上げ断行を予定。紆余曲折を極めた燃料値上げは来週にも決着がつきそうだ。
スディ・シララヒ国家官房長官は13日、ハリム空港で報道陣に対し「ヒルミ・アミヌディン党最高幹部、(党幹部の)サリム・セガフ・アルジュフリ社会相がユドヨノ大統領と会談し、PKS側が値上げ賛成を伝えた」と語り、PKSの連立脱退はないと明言した。
PKSが当初、値上げに反対していたことで、地元メディアは連立脱退観測を伝え、一部では「ユドヨノ大統領は直接言及こそしないもののすでに婉曲的な『ジャワ流』の表現でPKSの退席を暗に迫っている」「大統領はすでに連立解消を告げた」との憶測も飛んでいた。
PKSは先月末の連立与党合意を覆したことにより連立内で孤立。7日の連立与党会合ではPKS欠席のまま、参加各党が燃料値上げの方向性を確認し、11日の閣議も党幹部会合出席との理由でPKS所属の3閣僚だけが欠席していた。
来年の選挙をにらんだ執行部の判断とは別に、「クールダウンするように頼まれたが、燃料値上げには依然として反対だ」(タウフィック・リドハ幹事長)との意見も公になり、値上げ反対を訴える党の街頭看板も依然あるなど、不協和音が残っている。
■汚職問題で人気急落も
民主化時代に「清廉なイメージ」で党勢を拡大してきたPKSは、党中枢を直撃した汚職疑惑で人気が急落した。シンクタンクのインドネシア国際戦略研究所(CSIS)が先月発表した世論調査によると、PKSの政党支持率は2.7%。2009年総選挙の得票率7.88%と比較すると3分の1程度まで減り、全国政党として死活的な水準だ。「PKSは総選挙で足切り規定の得票率3.5%を下回る」(民主党のルフット・シトンプル氏)との声も上がり、総選挙後に国会議席を持たない公算の高い政党に閣僚ポストを与えておいてもあまり利益はない、との計算が働いてもおかしくない。
だが、PKSには大学での宣教運動を源流とするイスラム保守の強い組織力がある。牛肉輸入汚職事件で現職党首として初めてルトフィ・ハサン・イスハク前党首が容疑者に断定されるという逆風下で、2月の西ジャワ州知事選、北スマトラ州知事選でPKS党員の現職が当選し、大票田で強さを見せつけた。
ただ、日刊紙コランテンポ電子版によると、汚職撲滅委員会(KPK)は6月中にルトフィ前党首を起訴する方向で、選挙前に判決を受ける可能性もある。PKSは、汚職裁判の行方をにらみながら、選挙準備を進めていくことになりそうだ。(吉田拓史)