環境に優しいバティックを クリーン・バティック・イニシアティブ ファッションショーも開催

 美しい図柄や色彩が多くの人を魅了するインドネシアの伝統工芸バティック(ろうけつ染め)。ただ、その制作は排水による河川の汚染や温室効果ガスの排出などを伴う。環境に配慮したバティックを生産者・消費者・政策立案者の多方面へ働きかける取り組み「クリーン・バティック・イニシアティブ(CBI)」が進んでいる。
 CBIはバティック制作のエネルギー効率改善や自然染料の利用を奨励することを目的に、欧州連合(EU)の資金提供を受け、ドイツ・インドネシア商工会議所(EKONID)が2010年から実施している4年間のプログラム。
 ジャワ島、カリマンタン島、スラウェシ島内の計6州で、500以上に上る中小規模のバティック制作事業者に技術支援してきた。同時に販売業者向けの営業戦略指導や、地方・国政レベルでの政策立案に向けた活動を進めている。
 CBIのマルティン・クルムメック代表によると、実施最終年の今年は「持続可能な消費」に重点を置く。3年間の技術支援を受けた生産者たちによる高品質で、自然に優しいバティックの売り込みに力を入れる。特に、複雑な工程を経て制作されるバティックの価値に一定の理解があるとされる、インドネシア国内や日本、シンガポールなどのアジア市場に目を向けているという。
 11日には中央ジャカルタ・メンテンのトゥグ・クンストクリン・パレスで、「エコバティック・シグネチャー・コレクション」のファッションショーを開催。国内の著名デザイナーら5人がCBI参加者のバティックを使用した新作42点を発表した。自然染料の優しい色合いを生かしながら斬新なデザインを施した作品が観客の目を楽しませた。
 CBI実施担当者のユアニタ・スリヤディニさんは、CBIは最新技術を取り入れつつ「インドネシアの伝統を復興させる取り組み」と力を込める。産業廃棄物のおがくずなど、実施地域で手に入る原料を自然染料に利用する方法を探ったという。
 生産者の労働環境にも配慮する。灯油利用のコンロを電気コンロに替えることで、健康への悪影響が懸念されていた煙の発生を抑え、エネルギー効率も改善させたという。
 西ジャワ州チルボン県出身のバティック職人ロディアさん(26)はCBI参加後、化学染料を天然染料に切り替えた。伝統市場で一枚7万〜20万ルピアで売っていた布が、今では都市部からも注文を受け、30万〜150万ルピアで売れる。製品の品質が向上し、収入増加を実感しているという。(宮平麻里子、写真も)

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