時代の風すり抜ける 自転車オジェックが活躍 西ジャカルタ・コタ

 西ジャカルタの国鉄コタ駅やグロドックで自転車後部に客を乗せて走る「自転車オジェック」。オランダ植民地時代に始まったとも言われるが、市民の交通手段が多様化し、庶民の足がオートバイになった現代でも、その隙間を衝いてしぶとく生き残っている。
 グロドックの商業ビル「オリオン・プラザ」前に自転車のこぎ手が客待ちする一角がある。界隈で珍しい外国人相手に、こぎ手が「コタ駅まで、200メートルを3千ルピアだ」と話しかけてきた。ハルトノさん(38)がのんびりこぎだすと、車上に緩い風が流れた。座席の位置は案外高く、グロドックの古い商店の連なりを見渡しながら、往来をするりするりと抜けていく。爽快だ。ジャカルタらしからぬ「異国情緒」が感じられ、やがて見える国鉄コタ駅の植民地風の外貌もいい。
 ハルトノさんは12年前、中国・鳳凰自転車製のものを70万ルピアで購入して開業した。いままで同じ自転車を使い続けている。「1日の乗客はだいたい40人。1日の売り上げは平日は最高で30万ルピアになるときもあるが、日曜日は客足が鈍る」と話した。「開業したころから、こぎ手は半分くらいに減った。でも根強くお客さんがいるんだ」
 こぎ手たちによると、自転車オジェックはオランダ植民地時代に始まった「由緒ある乗り物」。どうして客は自転車を選ぶのか。18年にわたり、こぎ手をする古株のチャフヨノさん(62)に聞いてみた。「コタ駅から周辺の商業地域までの短かい道のりを3千〜8千ルピアで快適に向かえるからだ」と胸を張る。コタ駅は国鉄終点駅でブカシ、タンゲラン方面からの乗客が降りる。駅を基点に西に衣料、雑貨、おもちゃなどのパサール・パギ、南に電気街グロドック、東にマンガドゥアがあり、乗客には新たな足が必要だ。
 「そこまでオートバイに乗るほどの距離でもない。(運賃2千ルピアの)アンコット(相乗りバス)は渋滞のせいで全然進まないんだ」。確かに駅前交差点、グロドック、マンガドゥアの路上は自動車とオートバイがぎゅうぎゅう詰めで、貧弱な歩道を歩く気もしなくなるのが分かる。細道を通るのが時間を節約するコツになりそうだ。
 こぎ手は職業組合を数団体作り、駅や商業地域で客待ちの場所を分け合う。その一つ「自転車オジェック組合」の組合員はコタ駅、グロドック周辺で働く約30人。代表のアレクサンダルさん(28)は組合をこう説明する。「組合員は週1回の頻度で2千ルピアを私に払い、組合員の病気、自転車の故障に備えて積み立てている。組合自体は警察や州に届け出はしていないが皆から信頼を得ている」。組合員は中部ジャワ出身のジャワ人がほとんどだ。
 アレクサンドルさんは、グロドックの商店からの電器関連製品、DVDを客などに届ける仕事をこぎ手に手配する。乗客以外のもうけ口も開いているわけだ。自転車の後部座席のクッションは、真ん中から左右に開くと荷物の運搬もできるような荷台になる造りで、庶民の知恵にあふれている。(吉田拓史、写真も)

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