もしもの事態に備える AED使った心肺蘇生法 脳への血流確保が先決

 野球のボールの直撃など、胸部に加わった衝撃で心臓の筋肉がけいれんし、ポンプ作用を果たさなくなる心臓しんとう(心室細動)は子どもの突然死の原因の一つになっている。大人の場合には心筋梗塞などで起こることがある。ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)医療相談室の原稔医師によると、日本でも心肺停止状態で病院に搬送される患者のうち、助かるケースのほとんどは、搬送前から心肺蘇生が施されているケースという。渋滞などで早期の病院搬送が難しいインドネシアではなおさら、いざという時の備えとして頭に入れておきたい心肺蘇生法。心臓マッサージと人工呼吸、AED(自動体外式除細動器)の使い方を、原医師に説明してもらった。


■(1)事故発生直後
 呼び掛けて意識の有無を確かめ、反応がなければ頸動脈に触れて脈をとる。これと並行し、すぐに周囲の人を集め、AEDを取りに行く人や車を手配する人、連絡係などの役割を割り振る。うつ伏せになっていれば、頭と体が一直線になるよう、複数人で支えながら仰向けにする。(写真a)


■(2)心臓マッサージの開始
 反応がなく脈拍が確認できない場合、すぐに心臓マッサージを始める。患者の乳首と乳首を結ぶ線の中心に手のひらの付け根を当て(左右の手のひらを重ねる)、1分間に100回以上のペースで圧迫する。肘を伸ばし、肩が手のひらの真上にくるようにして体重をかけ、胸が少なくとも5センチ沈むくらい押す。マッサージを交代する場合は、交代者が反対側で待機しておくとスムーズ。圧迫を30回続け、人工呼吸に移る。(写真b)


■(3)気道確保と人工呼吸
 額を押しながらあごを上げ、気道を確保した上で、2回呼気を吹き込む。1回に1秒かけて息を吹き込み、胸の上がりを確認する。相手の口を覆うように口を合わせると空気が漏れない。2回人工呼吸を試みて上手くいかない場合は、胸骨圧迫を再開する(心臓マッサージの中断を最小限に抑えるため)。(2)、(3)を繰り返す。

■(4)AED到着後
 AEDの音声案内や説明表示に合わせ、パッドを胸に貼り付ける。準備中も(2)、(3)を続ける。服を脱がす間も中断は最小限にする。AEDが脈拍を確認する際にはアナウンスがあり、患者に触れてはいけない。必要に応じ電気ショックが適応される。その後、音声の合図で心臓マッサージを再開、以降アナウンスの指示に従う。(写真c、d)

■(5)意識の回復
 患者が体を動かしたり、うめいたりして反応があった場合は処置を止める。意識が戻っても、必ず病院で医師の診断を受ける。意識が戻らず、病院に搬送する場合も、後部座席を跳ね上げるなどして平らな面を作り、車内で心肺蘇生法を続ける。
 身体で最も重要な脳の細胞は、血液供給が止まると3分間で死に始める。心臓が止まった場合、「何もしなければ確実に死んでしまう」と原医師。事故が起これば、ちゅうちょせずに処置を始めることが大切だ。(道下健弘、写真も)

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