便器はよみがえる 「中国製か‥」肩落とす マンガライ中古市場

 南ジャカルタ・マンガライのスルタン・アグン通りの歩道に便器が敷き詰められた一角がある。「便器市場(パサール・クロセット)」。売り物のほとんどは事務所、ホテルなどの廃棄物を復活させた中古品で、草の根リサイクルの懐の深さをうかがわせる。
 軒先に便器をずらりと置いたルマ・トコ(住居兼店舗)が10軒ほど並ぶ。手前の歩道は便器の置き場になるだけでなく、回収品を洗浄する場所でもある。売り物はほかに各店ごとに洗面台、バスタブ、シンク、便器付属のシャワーノズルなど数々の水回り品を網羅する。ほとんどが中古品だ。売値は新品の半分から3分の1以下と安いため、水回りを安く抑えたい人に人気。客は購入した後、技師に頼むなどして便器を据え付ける。
 取材中、ちょうど便器を満載したバジャイ(3輪タクシー)が西ジャカルタ・グロゴルの事務所から到着した。この道30年と豪語する「キキ・ジャヤ・クロセット」店主マディン・ディアムンダリさん(45)は、従業員が次々に荷下ろしする便器10台を品定めする。「中国製か‥」と肩を落とした。中国製の売値は低く、日本、米国メーカーの方が高く、利幅が大きいようだ。例えば日本メーカーの品は安いもので35万ルピア、高いものは70万〜80万ルピアで売れるという。
 ただ買い取りの頻度にはむらがあるのが、この商売の難しいところだ。マディンさんは「3週間売り手がいないときもあるし、毎日のように買い取りするときもある」と語る。
 そこで店同士が協定を組んでいる。「11階建てのビルが全面改装に入って110器の売り注文が入ったときは、一店じゃ抱えきれないから他の店と分け合った。逆に品が不足した店があったら買い取り品を融通してあげる」。そこで気になるのが買い取り価格だが、それに関しては店主たちは一様に口をつぐむ。売値から想像すると、かなり安く買い取っているのだろう。
 届けられた便器の裏をまさぐり、ふたの留め具を次々に外す従業員の手際は慣れたもの。ホースで水をかけながら汚れがひどい場合は研磨剤、軽い場合は洗剤でごしごし磨く。暇なときは売り物の便器に座って休憩するのも、商売道具への愛着の現れだろうか。(吉田拓史、写真も)

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