【火焔樹】 美しいトバ湖なのに
昨年の11月、ジャカルタに来て32年目にして、メダンの避暑地トバ湖へ行ってきました。大学時代の友だちが旦那さんと娘さんと3人でやって来たので、「朋、遠方より来たるあり、幸いなるかな」と。夫には4人でないとホテルが取りにくいと伝え、彼を残して、友だちの家族3人と私の4人でメダン行きの飛行機に乗りました。
ポロニア空港に着いたら、日本語が上手で、太平洋戦争当時につけられていたような丸い縁の眼鏡をかけた、笑顔のやさしいジャワ人のガイドが迎えてくれました。メダンでは、スルタンのマイムン王宮を、ごみで一杯の前庭を通って見学後、中国寺院などを見ました。
道中ではスマトラ島の松や熱帯の木々、果樹園、菜園を見ながら、シマジャルンジュンの丘に着き、滝が流れ込むトバ湖を見ました。まさに絶景と言えるものでしたが、ここにもごみが足下のそこら中に落ちていました。サモシール島では、バタック族の石棺墓所などを見学し、ジャカルタへの帰途に着いたのです。もちろん、申し開きのためのお土産を持って。
ところで、日本の尾瀬はかつて汚かったことを知っていましたか。私はそのことを知って大変驚きました。1970年ごろの尾瀬はごみで一杯だったのを、ごみ箱を置かず、「ごみは持ち帰ろう」と言う運動の後、私たちの知っている美しい尾瀬となったのだそうです。
ジャカルタでごみの清掃をして下さっている日本の有志の方々にはとても頭が下がる思いですが、この思いをどうやってシマジャルンジュンの丘の人々に伝えれば良いのかと思っています。ごみのないマイムン王宮や美しいトバ湖に行き、高原のレストランでバンドレック(甘い生姜入り紅茶・コーヒー)を飲みながらピサンゴレン(揚げバナナ)を食べ、ブラスタギへ行く道中で食べたあの甘いドリアンをもう一度食べたいです。食べ物の話になってしまいましたが。(ゲストハウス経営・平井邦子)