「信仰の自由を守れ」 少数派、宗教の政治利用を懸念
人権団体「民主主義と平和のための調査研究所(スタラ・インスティテュート)」は4日、これまで襲撃などに遭った宗教少数派を交えた討論会を開き、来年の大統領選と総選挙に向け、宗教問題を政治的に利用する勢力をけん制、信仰の自由を保障するよう政府に求めた。
「少数派が結束することで政府への圧力になれば」。西ジャワ州クニンガン県マニスロル村のアフマディヤ信者のウミナさんはこの日、イスラム異端派とされるアフマディヤというだけで、同級生や教師から差別され登校できなくなった中学生の実情を打ち明けた。同県では条例でアフマディヤの活動が禁じられ、中には行政サービスを受けることができない信者もいるという。
スタラによると、宗教に絡んだ暴力事件は2010年が216件、11年が244件、昨年が264件発生。アフマディヤ信者や教会閉鎖が続くキリスト教徒など宗教的少数派は信仰の自由を求め結束しようとしている。ヘンダルディ代表は「ユドヨノ大統領は国民すべての信教の自由を保障した国家5原則パンチャシラに従わなければならない」と話した。
2006年にイスラム強硬派団体に襲撃されて以来、避難生活を強いられている西ヌサトゥンガラ州ロンボク島のアフマディヤ、昨年8月の襲撃以来、多数派への改宗を迫られる東ジャワ州マドゥラ島のイスラム・シーア派。教会がなく抗議デモを続ける西ジャワ州ボゴール市のヤスミン教会。全国各地で家を追われる少数派が続出している。
西ジャワ州ブカシ県政府に教会を閉鎖され、大統領宮殿前で抗議デモを続けるプロテスタント・バタック・キリスト教会(HKBP)フィラデルフィア教会のパルティ・パンジャイタン牧師は「闘いは長引くだろう。少数派は声をひそめてきたが、市民の人権を守るため闘い続ける」と話した。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチもこのほど、宗教的少数を狙った暴力事件が急増していると指摘。ユドヨノ大統領に対し、少数派への襲撃に断固とした姿勢を示すよう求めている。
■ブカシ県政府が教会閉鎖
7日午前10時ごろ、西ジャワ州ブカシ県でプロテスタント・バタック・キリスト教会(HKBP)フリア教会は建設許可を得ていないとして、県政府が閉鎖した。教会は10日、日曜礼拝を強行する姿勢を示す一方、県は来週中にも建物を取り壊す構え。
地元メディアによると、ネネン・ハサナ・ヤシン県知事からの勧告書を教会側に届けた県警備隊のディディック・ジャスマディ・アストラ隊長は「キリスト教徒の礼拝を禁じているのではなく、われわれは責務を果たしているだけ」と話した。
教会建設には自治体首長や地元住民からの同意が必要とされている。法律擁護協会(LBH)で宗教問題に取り組むユニタ・プルナマ弁護士は「同意を得られなければ礼拝所を建てられないこと自体が宗教の自由に反する」としたうえで、建設に同意しないよう地元イスラム団体が住民を脅している可能性を上げた。
「国際人権擁護のためのNGO連盟(HRWG)」のリスカ・アルガディアンティ・ラフマさんは「自治体が政治利益のために宗教を問題化している。本当は寛容性の問題でなく政治問題だ」と指摘する。(上松亮介)