中国の一極集中脱却へ スマランで工場着工 「洋服の青山」製造の服良
「洋服の青山」「ザ・スーツ・カンパニー」などを運営する紳士服製造・販売最大手、青山商事の製造子会社服良(名古屋市)の現地法人服良インドネシア社は28日、中部ジャワ州スマラン郊外の工業団地ブキット・スマラン・バルでスーツ製造工場の建設を開始した。中国の経営環境が変化し、インドネシアではジャカルタ周辺の賃金が急上昇する中、賃金水準が低い中部ジャワに生産拠点を構える形態の進出は、今後、縫製業など労働集約型産業の進出のモデルになる可能性がある。
中国では労働集約型産業で人材の確保が難しくなり始め、賃金が急速に上昇している。将来的に生産数量に影響が出る可能性があり、今回の進出を決めた。青山の製品を作る工場は中国以外ではミャンマー2カ所、ベトナム4カ所あり、カンボジアでは2カ所建設している最中。同日、行われた地鎮祭に出席した青山商事の青山理社長は「製品の75%を占める中国生産の比率を、2〜3年で50%くらいまでにしたい。一極集中はリスクが大きい」と語った。
新工場はASEAN(東南アジア諸国連合)の生産拠点を目指す。服良は来年2月ごろから男女のスーツ、ジャケットの生産を開始。年間50万着の生産を目指す。来年、中国人が一斉に休暇をとる旧正月の後、上海の現地法人の熟練技術者が来イして、工程の多いスーツなどの製造ノウハウを指導する。現地法人に10%資本参加する三井物産インターファッションが原材料調達、物流などを支援する。
■橋渡しする幹部を
青山は高価格帯製品を委託生産してきた服良を2011年12月子会社化している。「生産をシフトする上で高い技術力、生産管理能力を持つ服良と連携するのが重要と考えた」(青山社長)。服良は日本国内の縫製業の労働者確保が難しくなり、コスト競争力が落ちた1990年代に中国に進出し、最終工程、アフターケア以外の工程を移転していた。
インドネシアでも高い品質を作ることが求められる。服良の打越昌次社長は「中国での経験があり、良いものを作る自信もある」と語った。上海法人立ち上げ時も、日本に留学したワン・ジウェン海外事業本部長が「日本流」の橋渡しになったことを踏まえ、橋渡しする幹部、スタッフを育てていく考えだ。
■日系進出加速に期待
今年、ジャカルタ、西ジャワ州ブカシ県の最低賃金は4割以上上昇し200万ルピアを超えた。一方、中部ジャワ州スマラン市は120万9100ルピアと低い水準。労働力の確保も容易という。中部ジャワ州には韓国企業67社が進出する一方、日系企業は25社にとどまる。ユニ・アストゥティ同州投資局長は「青山のような大企業が来たことで、日系企業の進出が加速することを願う」と期待を込めた。中部ジャワは、賃金の低さから労働集約型産業に向いていると判断する企業も増えることが予想され、青山社長も「縫製産業の(中部ジャワ州への)進出が加速するだろう。当社が先駆者になる」と語った。
新工場は敷地面積1万6200平米、建屋面積8000平米。2階建て。投資額は800万ドル。現地法人の資本比率は服良80%、上海の服良現地法人が10%、三井物産インターファッションが10%。(中部ジャワ州スマランで吉田拓史、写真も)