ユドヨノ大統領に反旗　辞任したアナス前党首　センチュリー銀　救済事件告発か

　ハンバラン競技場建設に絡む汚職容疑で、汚職撲滅委員会（ＫＰＫ）が容疑者に断定したのを受け、民主党党首を辞任したアナス・ウルバニングルム容疑者は、これまで野党が民主党攻撃の材料としていたセンチュリー銀行救済事件を持ち出し、ユドヨノ大統領が主導することになった民主党の内部告発を展開する姿勢を示している。２０１０年の党首選でユドヨノ大統領の推薦候補を破って当選し、党内の基盤を固めてきたアナス前党首の出方に注目が集まっている。

　東ジャカルタ・ドゥレンサウィットにあるアナス前党首の自宅には、党首辞任を発表した２３日以降、有力政治家や政府高官らが相次いで訪れている。
　前党首の親族で、学生活動家時代の盟友でもある野党・ハヌラ党幹部のユディ・クリスナンディ氏は２５日、アナス前党首がセンチュリー銀行救済事件に関する有力な情報を持っていると指摘。党首辞任はこれからの展開の１ページ目と話した前党首にならって「２ページ目はセンチュリー事件の告発」と明言した。
　事件当時の状況を知るアンワル・ナスティオン元中銀上級副総裁や、国会の同事件調査チーム代表らも自宅を訪問。近く正式に事情を聴くとの方針を示している。
　ほかにも、ゴルカル党のアクバル・タンジュン元党首、ファフミ・イドリス元産業相ら、アナス前党首が所属していたイスラム学生同盟（ＨＭＩ）の先輩らが相次いで訪問。マーフッド憲法裁判所長官は面会後、「ＫＰＫは公平に捜査すべきだ」とＫＰＫ批判を展開した。
　こうした動きに対し、ＫＰＫは、汚職容疑者に共感を示す有力者たちに遺憾の意を表明。センチュリー銀事件については、捜査は継続しており、１０年に同事件の責任を問われ、辞任に追い込まれたスリ・ムルヤニ蔵相（当時、現世銀専務理事）らを改めて聴取するとの方針を示した。
　一方、ハンバラン競技場建設汚職事件では、ユドヨノ大統領の次男エディ・バスコロ（通称イバス）同党幹事長が収賄し、事件発覚前に党幹部が集まった会議の席で大統領が激怒したことがあるとの証言も出ており、アナス前党首が一連の疑惑について明らかにしていく可能性もあるとの見方が出ている。

■アナス派離党は限定的
　アナス前党首の暴露予告に対し、民主党幹部のマルズキ・アリー国会議長は「アナス前党首は事件に関する重要な情報は持っていない」と指摘。アナス派が離党する動きも出ていることについては「限定的。党員たちは党首ではなく、党に忠誠を誓っている」との見方を示した。
　党内反アナス派の急先鋒、ウリル・アブシャル・アブダラ氏は、アナス前党首が辞任演説で自身について「出生を望まれていなかった私生児」と述べたことに対し、「ユドヨノ大統領は（党首選が開かれた）１０年の時点でまずアナス氏を幹事長にし、１５年に党首にしてから１９年の大統領選に出馬させることを考えていた」と説明。党内の支持基盤を固めたアナス前党首が、大統領の意向に反して当選したと振り返った。
　ユドヨノ大統領が議長を務める党最高意思決定機関は、党首選の開催時期は未定としており、イバス幹事長や副党首ら４人を党首代理に任命。来年の総選挙を控え、４月９日締め切りの議員候補者名簿の作成に注力するとしている。
　辞任後、沈黙を保っていたアナス前党首は２７日、テレビ各局のインタビューに応じた。ユドヨノ大統領に「抵抗」「反撃」などとセンセーショナルに報じられていることに対し、「大統領であり、党の最高幹部であるユドヨノ氏と私とでは天と地の差がある」とした上で、「私はすでに容疑者となった。身の潔白を示すために捜査に応じていく」と話した。