改造内閣を発表 横滑り5、新入閣7 運輸相更迭、エネ相ジェロ氏

 二十日の第二期政権発足二年を前にユドヨノ大統領は十八日午後八時、中央ジャカルタの大統領官邸で、五人を横滑り、七人を新たに入閣させる改造内閣の人事を発表した。内閣改造は二〇〇九年十月の第二期政権発足後初めて。同年の大統領選を圧勝で制して再選を決め、七五%の国会議席を占める連立与党の下、第一期政権以上の政策遂行が期待されたが、好調なマクロ経済や国際舞台で存在感を見せている外交に比べ、内政面では停滞感がにじむ。大統領自らが率いる民主党議員の汚職疑惑も響いて支持率が続落する中、大統領を退任する二〇一四年の総選挙まで折り返し地点となり、人心一新で残り任期での反転攻勢を狙う。(関口潤、写真も)

 ギタ・ウィルヤワン投資調整庁(BKPM)長官を商業相に横滑り。マリ・パンゲストゥ商業相は観光創造経済相に横滑りさせた。エネルギー鉱物資源相にはダルウィン・サレ氏に代わり、ジェロ・ワチック文化観光相が就任。フレディ・ヌンベリ運輸相を更迭し、エルネス・マンギンダアン国家行政改革担当国務相を横滑りさせた。
 新たに入閣したのは、法務人権相のアミル・シャムスディン民主党最高顧問会議委員、海洋水産相のシャリフ・チチップ・スタルジョ・ゴルカル党副党首、国営企業担当国務相のダフラン・イスカン国営電力会社PLN社長ら七人。先月腹部の痛みで入院したムスタファ・アブバカル国営企業担当国務相は更迭した。
 汚職疑惑のあるムハイミン・イスカンダル労働移住相、アンディ・マラランゲン青年スポーツ担当国務相ら、更迭の可能性が報じられてきた各党幹部は留任となった。
 三調整相や内相、外相、蔵相などの主要閣僚は交代しなかった。

■「適材適所」
 ブディオノ副大統領を横に午後八時ちょうどから改造人事の発表を始めたユドヨノ大統領は、批判の芽を摘み取るように教育省、文化観光省の省名変更や副大臣の拡充、改造のタイミングなどの説明に多くの時間を割いた。
 大統領は改造の目的について「次の三年間で政権運営の効率性を上げるため」とあらためて主張。「業績評価」「適材適所」などの点を重視して閣僚を配置したと強調した。
 この二年間、改造の憶測がたびたび上がったが、実行しなかったことで「優柔不断」との批判につながったことに対し、大統領は「早い時期に改造を行えば、政権運営の安定性と継続性を損なっていた」と反論した。満を持して新閣僚の発表に移ると、「世界経済に不安感が漂う中、商業相は重要だ」「新しい宗教副大臣には宗教対立を防ぐ環境作りに励んでもらいたい」など一人一人の選出の背景と激励を丁寧に語った。


◇省名を変更 教育省→教育文化省 文化観光省→観光創造経済省
 ユドヨノ政権は内閣改造に合わせ、「教育省」を「教育文化省」に、「文化観光省」を「観光創造経済省」に名称と役割を変更した。国会本会議は十八日、省名の変更を承認した。
 教育省はスハルト政権退陣後、教育文化省から名称を変更していたが、再度名称を戻すことになった。
 ユドヨノ大統領は「教育と文化には強固な関係がある」「観光と創造経済が一つになれば外貨獲得源となり、インドネシア経済はより発展する」と役割変更の理由を語った。

◇第2期ユドヨノ改造「統一内閣」
 大統領  スシロ・バンバン・ユドヨノ
 副大統領 ブディオノ

◇調整相
 政治・法務・治安担当 ジョコ・スヤント
 経済担当 ハッタ・ラジャサ
 公共福祉担当 アグン・ラクソノ
 国家官房長官 スディ・シララヒ
 各省大臣
 内務大臣 ガマワン・ファウジ
 外務大臣 マルティ・ナタレガワ
 国防大臣 プルノモ・ユスギアントロ
 法務人権大臣 アミル・シャムスディン(新)
 大蔵大臣 アグス・マルトワルドヨ
 エネルギー鉱物資源大臣 ジェロ・ワチック(替)
 工業大臣 モハマッド・スレマン・ヒダヤット
 商業大臣 ギタ・イラワン・ウィルヤワン(替)
 農業大臣 ススウォノ
 林業大臣 ズルキフリ・ハサン
 運輸大臣 エフェル・エルネス・マンギンダアン(替)
 海洋水産大臣 シャリフ・チチップ・スタルジョ(新)
 労働移住大臣 ムハイミン・イスカンダル
 公共事業大臣 ジョコ・キルマント
 保健大臣 エンダン・ラハユ・スディアニンシ
 教育文化大臣 ムハンマド・ヌー
 社会大臣 サリム・セガフ・アルジュフリ
 宗教大臣 スルヤダルマ・アリ
 観光創造経済大臣 マリ・パンゲストゥ(替)
 通信情報大臣 ティファトゥル・スンビリン

◇国務相
 研究技術担当 グスティ・ムハンマド・ハッタ(替)
 協同組合・中小企業担 シャリフディン・ハサン
 環境担当 バルタサル・カンブアヤ(新)
 女性問題・児童保護担当 リンダ・アマリア・サリ
 国家行政改革担当 アズワル・アブバカル(新)
 途上地域開発担当 ヘルミ・ファイシャル・ザイニ
 国家開発計画担当 アルミダ・アリシャバナ
 国営企業担当 ダフラン・イスカン(新)
 国民住宅担当 ジャン・ファリズ(新)
 青年スポーツ担当 アンディ・アルフィアン・マラランゲン

◇閣僚級
 検事総長 バスリフ・アリフ
 国軍司令官 アグス・スハルトノ
 国家警察長官 ティムール・プラドポ
 内閣官房長官 ディポ・アラム
 開発管理調整官 クントロ・マンクスブロト
 国家情報庁長官 マルチアノ・ノルマン(新)
 ※(新)は新しく入閣、(替)は配置換え(横滑り

◇副大臣
 外務副大臣 ワルダナ(新)
 国防副大臣 シャフリー・シャムスディン
 法務人権副大臣 デニー・インドラヤナ(新)
 大蔵副大臣 アニー・ラトナワティ
 大蔵副大臣 マヘンドラ・シレガル(替)
 エネルギー鉱物資源副大臣 ウィジャヨノ・パルトウィダグド(新)
 工業副大臣 アレックス・レトラウブン
 商業副大臣 バユ・クリスナムルティ(替)
 農業副大臣 ルスマン・ヘリアワン(新)
 運輸副大臣 バンバン・スサントノ
 公共事業副大臣 ヘルマント・ダルダック
 保健副大臣 アリ・グフロン・ムクティ(新)
 教育文化副大臣(教育担当) ムスリアル・カシム(新)
 教育文化副大臣(文化担当) ウィエンドゥ・ヌルヤンティ(新)
 宗教副大臣 ナザルディン・ウマル(新)
 観光創造経済副大臣 サプタ・ニルワンダル(新)
 国家行政改革担当国務副大臣 エコ・プラソジョ(新)
 国家開発計画担当国務副大臣 ルキタ・ディナルシャ・トゥウォ
 国営企業担当国務副大臣 マフムディン・ヤシン(新)
 ※(新)は新しく副大臣に就任、(替)は配置換え(横滑り)

■法務人権大臣ーアミル・シャムスディン氏
 一九四六年五月二十七日、南スラウェシ州マカッサル生まれ。ムスリム。
 インドネシア大学(UI)法学修士号取得。弁護士。七八年、カリギス・アンド・アソシエイツ法律事務所で弁護活動を開始。
 民主党幹事長、党顧問会議委員などを歴任した。

■海洋水産大臣ーシャリフ・チチップ・スタルジョ氏
 ゴルカル党国会議員、同党副党首。国家経済委員会(KEN)委員。
 一九八三年から八九年までインドネシア若手経営者協会(HIPMI)会長、二〇〇〇年から〇四年までインドネシア商工会議所(カディン)幹部のほか、華人友好協会会長などを歴任している。

■環境担当国務大臣ーバルタサル・カンブアヤ氏
 一九五六年、西パプア州ソロン生まれ。
 英国のダラム大学でMBA(経営学修士)を取得し、南スラウェシ州マカッサルのハサヌディン大で博士号を取得した。
 現在、パプア銀行の会長とパプア州ジャヤプラのチェンドラワシ大学長を務めている。

■国家行政改革担当国務大臣ーアズワル・アブバカル氏
 一九五二年六月二十一日、アチェ州バンダアチェ市生まれ。ムスリム。シャークアラ大経営大学院修士号取得。九九年、国民信託党(PAN)に入党。二〇〇九年から国会議員、国会第一委員会(外交・国防・情報担当)委員。〇一年、アチェ州副知事に就任。〇四年、汚職で逮捕された州知事の代行を務めた。

■国営企業担当国務大臣ーダフラン・イスカン氏
 一九五一年八月十七日、東ジャワ州マグタン生まれ。ムスリム。七五年、地方紙で記者職に就き、七六年からテンポ誌記者。八二年ジャワ・ポス紙の会長に就任。全国に地方紙を創刊し、最大の新聞ネットワークを構築。〇九年、国営電力会社PLN社長に就任。独立系電力会社のチャハヤ・ファジャル・カルティム社、プリマ・エレクトリック・パワー社の社長も兼任、ジャーナリストとビジネスマンの顔を持ち合わせる。

■国民住宅担当国務大臣ージャン・ファリズ氏
 一九五〇年八月五日、ジャカルタ生まれ。ムスリム。タルマヌガラ大学建築学科卒。八〇年、建設会社のプリアマナヤ・ジャン・インターナショナル(PDI)社を設立し、不動産やエネルギー業界に従事。開発統一党(PPP)の中央執行委員会委員を歴任。二〇〇九年、ジャカルタ特別州議会議員に就任、一一年から国内最大のイスラム団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)ジャカルタ支部代表。

■国家情報庁長官ーマルチアノ・ノルマン氏
 一九五四年十月二十八日、南カリマンタン州バンジャルマシン生まれ。ムスリム。七八年、陸軍士官学校卒。父親のノルマン・サソノ同様、二〇〇八年、大統領親衛隊司令官、一〇年、ジャヤ師団(ジャカルタ軍管区)司令官を歴任、一一年四月、陸軍教育演習担当参謀に就任した。

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