有機農業を技術移転 ハサヌディン大と協定 人口900人の岡山県新庄村 アジアの農業に活路

 人口約900人の岡山県新庄村が、有機農業を通じアジア各国の農業振興に貢献し、村の活性化につなげようと奮闘している。今月初旬、南スラウェシ州マカッサルのハサヌディン大学との間で有機農業支援に関する協定を締結。65歳以上の高齢者が約40%を占める同村が結んだ協定は、有機農業に関心のある研修生ら若者を呼び込み、過疎化を食い止めるための活路にしようという試みだ。

 今回の協定は、同大の実験ほ場「マリノ実習地区」責任者で、国際医療ボランティアAMDA(岡山県岡山市)インドネシア支部長を務めるアンディ・フスニ・タンラ教授の仲介で実現した。
 新庄村の笹野寛村長が先月31日〜4日の日程で同大の「マリノ実習地区」を訪問。同地区の気候や農業形態を視察した。
 実習地区周辺には農薬を使用する農家が多いが、有機農業を普及させることで、販売する農産物の付加価値を高めるとともに、地元の人々のより安全な食生活の確保を支援するのが狙いだ。5月から約半年間、同大の学生2人を同村で受け入れ、有機農業の技術指導や人材育成に関する研修を行う。土壌に適した作物や栽培方法を学んでもらう。
 笹野村長は「新庄村を『有機農業のモデル地区』としてアピールし、アジアからの注目を集めることで、村の活性化につなげたい。必要であればインドネシアへ人材を派遣する用意もある。全面的に支援する」と力を込めた。
 同村は岡山県内唯一の村で、林業と農業が産業基盤。2005年に近隣の市町村と合併する話が持ち上がったが、他町村との合併を選ばず、単独で歩む道を選択した。人口が減少する中で、有機農業を主体に村おこしを行い、若者の定住人口を増やす計画を村で策定したという。豊かな自然を生かした観光客誘致や有機米を使った加工食品などの販売にも力を入れている。
 11年、地域振興とアジア地域への有機農業の技術移転を目的に「アジア有機農業プラットフォーム(連携活動)推進条例」を制定。AMDAと協力し、「AMDA野土路農場 」を村内に設立した。AMDAの国際的なネットワークを活用しながら有機農業で培ってきた技術などをアジア各国に広げていくことを目指す。
 11年にはベトナムへ調査団を派遣し、現地の実態調査を実施した。

■安心な作物、アジアに
 同年にAMDAは、同村で1ヘクタールの農地を取得し、農場を開設。現在は職員2人が常駐し、過疎化が進む同村の有機農業を支援している。AMDAの菅波茂理事長は「新庄村の有機農業を活性化させることで村おこしにつながり、安全で安心な農産物をアジア各国に提供することができる。村の自然の豊かさは一つの魅力であり、うまく活用していくことが大切だ」と話した。
 アジア地域でのノウハウ普及を目指し、今後は同村と協力して、アイガモ農法を用いたコメの栽培や堆肥を使った有機農業を実践していくという。(小塩航大)

※追記(2013年3月8日)
「アンディ・フスニ・タンテ教授」は「アンディ・フスニ・タンラ教授」の間違いでした。お詫びして訂正します。

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