未来の家を考える インドネシア大で講演 HOUSE VISIONの土谷貞雄さん
車が寝室まで入ってくる家、眠りの質を機械が判定する家、柱がなく、収納家具と屋根だけでできる家―。「新しい常識で都市に住もう」を理念とし、新しい暮らし方の情報発信と研究のプラットフォームである「HOUSE VISION」世話人の土谷貞雄さんが18日、インドネシアの人々とともに「家」の未来を考えようと、西ジャワ州デポックのインドネシア大学(UI)で講演した。日本では人口、家族構成が大きく変わり、スマートハウスの実験など家の形が変化している今、アジア独自の文化や生活を視野に入れ、家に関わる新しい産業の可能性も探っている。
HOUSE VISIONは日本人の暮らし方を具体的に提示するため、2011年、デザイナーの原研哉氏と土谷さんを中心に、デザイナーや企業、建築家らと発足。月に1度、東京や北京で研究会を開催してきた。
家はエネルギーや住宅設備、資材、通信技術など多様な産業と関わることから、家を軸とした産業を作り、未来の住まい方を模索。その成果として、3月には経済産業省、国土交通省、環境省の後援を受け、東京の臨海副都心で企業と建築家が共同提案する実物大の家の展示会を開催する。
土谷さんは今後、中国やインドを含めたアジアへ広げることを目指し、「インドネシアの人々と一緒に住まい方について考え、ジャカルタでも展示会をしたいと思っている」と話した。
講演では伊東豊雄氏や坂茂氏など有名建築家がリクシルや無印良品、ホンダなどの企業と共同で作るブースの完成予想図を紹介。テクノロジーや日本の美意識からなる「新しい家」を提示した。
■住産業の輸出も
2010年の総務省国勢調査によると、日本では1960年に1世帯4.14人だったのが、2010年には2.42人になった。少子高齢化で家族構成が変化し、膨大な住宅ストックを活用するリノベーション産業が注目を集めている。HOUSE VISIONではこうした日本の産業の輸出も目論んでいる。
しかし土谷さんは、日本の家をそのまま輸出するわけではないと話す。「インドネシアは、日本や西欧と同じ未来でなく、独自の文化があり、未来がある。どんなコミュニティーにしたいか、そのために何が必要かを考えなければいけない」と語り、「HOUSE VISIONはその手助けをし、みんなで未来を考えたい」と呼び掛けた。(高橋佳久、写真も)